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歴代最強の世界選抜XV(異論は認める)元ラガーマンがポジション別に本気で選考

マコウ、カーター、ロムー、オドリスコル…歴代最強の世界選抜15人を、W杯の実績・ポジションを変えた功績・チームとしての噛み合わせの3基準で本気で選んだ。最後まで決められなかった9番論争も収録。

Text — LEO Updated — Read — 8分
歴代最強の世界選抜XV(異論は認める)|元ラガーマンがポジション別に本気で選考

ラグビー好きが3人集まれば、必ず始まる話がある。「歴代最強の15人を選ぶなら誰だ」。答えは絶対に一つにならないし、だから面白い。今回はラガサプ編集長が、ポジションごとに一人ずつ、本気で選んだ。基準は後で書く。先に言っておくと、スクラムハーフだけは最後まで決めきれなかった。異論は認める。むしろ待っている。

Pointこの記事の結論

  • 選考基準は「国際舞台での実績(W杯・キャップ・個人賞)」「ポジションの概念を変えたか」「この15人の中で役割が噛み合うか」の3つ。
  • ニュージーランドから5人、南アフリカから3人、オーストラリア・イングランド・フランスから各2人、アイルランドから1人。W杯優勝経験者は15人中11人。
  • 一番悩んだのは9番。現役のアントワーヌ・デュポンか、1970年代のガレス・エドワーズか。
  • 各ポジションの詳しい解説と日本の名選手は、それぞれのポジション記事にリンクしている。

Contents 目次
  1. 選考のルールを先に決めておく
  2. フロントロー:スクラムは“両側”で勝つ
  3. 1番 オス・デュラント(南アフリカ)
  4. 2番 ショーン・フィッツパトリック(ニュージーランド)
  5. 3番 ジェイソン・レナード(イングランド)
  6. セカンドローとバックロー:空中と地上を支配する5人
  7. 4番 マーティン・ジョンソン(イングランド)
  8. 5番 ジョン・イールズ(オーストラリア)
  9. 6番 ピーターステフ・デュトイ(南アフリカ)
  10. 7番 リッチー・マコウ(ニュージーランド)
  11. 8番 キーラン・リード(ニュージーランド)
  12. ハーフ団:一番悩んだ9番と、迷わなかった10番
  13. 9番 アントワーヌ・デュポン(フランス)
  14. 10番 ダン・カーター(ニュージーランド)
  15. バックス:止められない男たちを並べる
  16. 11番 ジョナ・ロムー(ニュージーランド)
  17. 12番 ティム・ホーラン(オーストラリア)
  18. 13番 ブライアン・オドリスコル(アイルランド)
  19. 14番 ブライアン・ハバナ(南アフリカ)
  20. 15番 セルジュ・ブランコ(フランス)
  21. 完成した15人を一覧で
  22. リザーブと、泣く泣く外した人たち

選考のルールを先に決めておく

「最強」の定義を決めないと、ただの好きな選手リストになる。なので3つのルールを置いた。

  1. 国際舞台での実績W杯の優勝、テストマッチのキャップ数、ワールドラグビーの年間最優秀選手などの個人賞。数字で確認できるものを重視した。
  2. ポジションの概念を変えたか「この選手の前と後で、そのポジションの役割が変わった」と言える選手を優先した。
  3. 15人として噛み合うかスター選手を15人並べても、同じタイプばかりだと試合にならない。スクラムを組めるか、ラインアウトで取れるか、キックで陣地を取れるか。チームとして成立するかを最後に見た。

もう一つ、現役選手はキャリアの途中なので慎重に扱った。入れたのはデュポンとピーターステフ・デュトイの2人だけ。キャップ数などの数字は、特記がない限り代表引退時点のものだ。

フロントロー:スクラムは“両側”で勝つ

1番 オス・デュラント(南アフリカ)

1995年と2007年、2度のW杯優勝を経験したルースヘッドプロップ。1995年の優勝メンバーのうち、2007年まで現役を続けた最後の一人で、2007年の決勝が代表最後の試合になった。そこでも80分間ピッチに立っている。テストマッチ80キャップ。アマチュア時代とプロ時代の両方で世界の頂点に立った、という事実だけで1番の座にふさわしい。プロップという仕事の中身はプロップの特徴と伝説のプロップで詳しく書いた。

2番 ショーン・フィッツパトリック(ニュージーランド)

1987年の第1回W杯で優勝したオールブラックスの一員で、1992年から1997年の引退までキャプテン。キャップは92。フッカーはスクラムの真ん中で押し、ラインアウトで投げ、フィールドでは第4のバックローとして走る。その全部を高いレベルで、しかも主将として続けた。フッカーの特徴と世界・日本のすごい選手もあわせてどうぞ。

3番 ジェイソン・レナード(イングランド)

ここは異論が一番出そうな枠だと思う。レナードはイングランド代表114キャップ、ライオンズでも5キャップ。2003年W杯の優勝メンバーで、W杯には1991年から2003年まで4大会出ている。キャリアの前半は1番、1996-97年シーズンからは3番でもプレーした。つまり、スクラムの“両側”を知っている。控えのプロップが両側をこなせることがどれほど大事かは、経験者なら痛いほどわかるはずだ。

セカンドローとバックロー:空中と地上を支配する5人

4番 マーティン・ジョンソン(イングランド)

2003年W杯でイングランドを優勝に導いたキャプテン。その決勝が、84キャップ目にして代表最後の試合だった。ライオンズでも主将を務めている。ジョンソンの凄さは、ラインアウトやモールの技術だけでなく、試合の空気ごと支配してしまう存在感にあった。

5番 ジョン・イールズ(オーストラリア)

1991年と1999年、ワラビーズの2度のW杯優勝をどちらも経験したロック。キャップは86。200センチのロックでありながらゴールキックも蹴れた、という規格外の万能さで知られる。1999年大会はキャプテンとしての優勝だった。ジョンソンが“圧”で押すタイプなら、イールズは“技”でさばくタイプ。この2人を並べたかった。ロックの系譜はロックの特徴と伝説のロックで。

6番 ピーターステフ・デュトイ(南アフリカ)

現役から一人。ワールドラグビーの年間最優秀選手に2019年と2024年の2度選ばれ、2019年と2023年のW杯連覇に貢献した。身長2メートルのロック級の体で、ブラインドサイドフランカーとして80分走り続ける。トヨタヴェルブリッツの一員としてリーグワンでもプレーしてきたので、日本のファンにもなじみがあるはずだ。

7番 リッチー・マコウ(ニュージーランド)

ここだけは迷わなかった。テストマッチ148試合のうち110試合でキャプテン。2011年と2015年、W杯を2連覇したときの主将で、ワールドラグビー年間最優秀選手には最多タイの3回選ばれている。ブレイクダウン(タックル後のボール争奪)の概念を変えた選手と言っていい。フランカーの仕事はフランカーの特徴と世界・日本のすごい選手にまとめた。

8番 キーラン・リード(ニュージーランド)

2013年の年間最優秀選手で、マコウとともに2011年・2015年のW杯を連覇。127キャップで、代表主将も務めた。No.8の役割を「スクラムの最後尾で球を持ち出す人」から「フィールドのどこにでも現れるリンク役」に広げた選手だと思う。No.8の特徴と伝説の選手もどうぞ。

148キャップリッチー・マコウのテストマッチ出場数(うち110試合でキャプテン)

ハーフ団:一番悩んだ9番と、迷わなかった10番

9番 アントワーヌ・デュポン(フランス)

正直に書く。最後まで決められなかった。デュポンは2021年のワールドラグビー年間最優秀選手(15人制)で、2024年には7人制の年間最優秀選手にも選ばれた。両方を受賞したのは彼が初めてだ。2024年のパリ五輪では7人制で金メダル。15人制でも7人制でも世界の頂点を獲った9番は、ほかにいない。

デュポン派VSガレス・エドワーズ派

デュポン派:パス、キック、ラン、タックル、ジャッカル。SHに求められる全部を、歴代で一番高いレベルで持っている。15人制と7人制の両方で年間最優秀選手になった実績は反論の余地がない。エドワーズ派:ウェールズ代表53キャップ、ライオンズで10キャップ。1970年代に“走るSH”の原型を作った人で、デュポンのようなSHが生まれる土台を作った。時代を補正すれば、こっちが上だ。

最終的にデュポンにしたのは、ルール3「噛み合うか」の観点からだ。この15人のバックスはランナーが多い。9番に自分で仕掛けられる選手がいると、相手のディフェンスはラックの周りに人を割かざるを得ず、外のロムーやハバナにスペースが生まれる。SHの系譜はスクラムハーフの特徴と伝説の9番で詳しく。

10番 ダン・カーター(ニュージーランド)

こちらは迷わなかった。テストマッチ112試合で1,598点。年間最優秀選手には2005年、2012年、2015年の3回選ばれた。2015年W杯では優勝の立役者になっている。カーターのすごさは、キックの正確さに加えて、パスもランも全部が一級品だったことだ。SOに求められる技術の全部を、歴代で一番高い水準で持っていた。10番の仕事はスタンドオフの特徴と伝説の10番で。

Q1ダン・カーターがテストマッチで記録した通算得点は?答えを見る

答えは1,598点。112試合で、トライ29、コンバージョン293、ペナルティゴール281、ドロップゴール8の内訳だ。1試合あたりの平均は14点を超える。

バックス:止められない男たちを並べる

11番 ジョナ・ロムー(ニュージーランド)

ラグビーを知らない人にも名前が届いた、おそらく最初のラグビー選手。196センチの体で、100メートルを走るスプリンターのように加速した。W杯での通算15トライは、のちに南アフリカのブライアン・ハバナが並ぶまで単独の歴代最多記録だった。1995年W杯準決勝のイングランド戦で奪った4トライは、今でもW杯史に残る名場面として語られる。

ジョナ・ロムー、イングランド戦で4トライ(All Blacks公式) YouTubeで見る

12番 ティム・ホーラン(オーストラリア)

1991年と1999年、2度のW杯優勝を経験したセンター。1999年大会では大会最優秀選手に選ばれた。80キャップ。ホーランを12番に置いたのは、ボールを持って前に出る力と、外に回す判断の両方を持っていたからだ。13番のオドリスコルと組ませると、パスでもランでも崩せるミッドフィールドになる。

13番 ブライアン・オドリスコル(アイルランド)

アイルランド代表で133キャップ、ライオンズで8キャップ、合計141のテストマッチ。アイルランド代表で46トライを挙げ、同国の最多トライ記録を持つ。2009年にはキャプテンとしてアイルランドを61年ぶりのグランドスラム(シックス・ネーションズ全勝)に導いた。13番はディフェンスで一番広いエリアを任されるポジションで、攻撃でも守備でも読みの速さが抜けていた。センターの2つの番号の違いはセンターの特徴と世界・日本のすごい選手で解説している。

14番 ブライアン・ハバナ(南アフリカ)

124キャップで67トライ。2007年W杯では1大会8トライを挙げて南アフリカの優勝に貢献し、その年の年間最優秀選手に選ばれた。W杯通算15トライでロムーに並んでいる。ロムーが“壊す”ウイングなら、ハバナは“置き去りにする”ウイング。左右で違うタイプを並べると、相手はどちらかに人数を寄せられない。ウイングの系譜はウイングの特徴と伝説のトライゲッターで。

15番 セルジュ・ブランコ(フランス)

1980年から1991年までフランス代表で93キャップ。当時の世界最多キャップで、フランス代表の最多トライ記録も長く持っていた(2025年にダミアン・ペノーが並び、同年のうちに抜いた)。自陣深くからでも仕掛ける“シャンパン・ラグビー”の象徴で、フルバックを「守る人」から「攻撃の起点」に変えた選手の一人だ。ニュージーランドのクリスチャン・カレン(テストマッチ58試合で46トライ)とは最後まで迷った。15番の歴史はフルバックの特徴と伝説の15番で。

完成した15人を一覧で

番号 選手 国 主な実績
1 オス・デュラント 南アフリカ W杯優勝2回(1995、2007)
2 ショーン・フィッツパトリック ニュージーランド W杯優勝(1987)、92キャップ
3 ジェイソン・レナード イングランド W杯優勝(2003)、114キャップ
4 マーティン・ジョンソン イングランド W杯優勝主将(2003)
5 ジョン・イールズ オーストラリア W杯優勝2回(1991、1999)
6 ピーターステフ・デュトイ 南アフリカ 年間最優秀選手2回、W杯優勝2回
7 リッチー・マコウ ニュージーランド W杯優勝主将2回、148キャップ
8 キーラン・リード ニュージーランド W杯優勝2回、年間最優秀選手(2013)
9 アントワーヌ・デュポン フランス 年間最優秀選手(2021)、五輪7人制金
10 ダン・カーター ニュージーランド テスト1,598点、年間最優秀選手3回
11 ジョナ・ロムー ニュージーランド W杯通算15トライ
12 ティム・ホーラン オーストラリア W杯優勝2回、1999年大会最優秀選手
13 ブライアン・オドリスコル アイルランド テスト141試合、2009年グランドスラム主将
14 ブライアン・ハバナ 南アフリカ W杯優勝(2007)、67トライ
15 セルジュ・ブランコ フランス 93キャップ(当時世界最多)

数えてみると、W杯優勝を経験しているのは15人中11人。優勝経験がないのはロムー、オドリスコル、デュポン、ブランコの4人だ。ロムーとオドリスコルは、優勝していないのに“史上最高”の議論に必ず名前が出る。その事実が、この2人の異常さを物語っていると思う。


リザーブと、泣く泣く外した人たち

ベンチの8人も考えた。ガレス・エドワーズは9番の控えではもったいないが、あえてここに入れる。クリスチャン・カレンはどこに置いてもトライを獲る。ほかにも、SOならジョニー・ウィルキンソン、ロックならポール・オコンネル、フランカーならデビッド・ポーコックの名前を挙げる人は多いはずだ。書き出すと止まらないので、このへんでやめておく。

日本の選手を入れなかったのは、世界選抜と日本選抜を分けて考えたかったからだ。日本代表の歴代XVは歴代最強のラグビー日本代表XVで、同じく本気で選んでいる。

最後に一つだけ。15人を選んでみて改めて思ったのは、どの時代にも“その時代のルールでしか生まれない怪物”がいるということだ。ロムーは1990年代の大きなスペースの中で生まれ、デュポンは現代の高速なブレイクダウンの中で生まれた。時代をまたいで比べるのは無茶で、だからこそ何度でも語れる。

参考:Richie McCaw(Wikipedia英語版)/Dan Carter(Wikipedia英語版)/Antoine Dupont(Wikipedia英語版)/Brian O’Driscoll(Wikipedia英語版)/Bryan Habana(Wikipedia英語版)/Records and statistics of the Rugby World Cup(Wikipedia英語版)

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LEOEditor-in-Chief

埼玉工業大学深谷高等学校(埼工大深谷。現・正智深谷)ラグビー部出身。WTB→CTB→FLと渡り歩き、在籍中のチームは花園2年連続ベスト4。いまはラグビージャージのデザイン制作(HERCULEGEAR)に携わりながら、ラグビーの面白さを書いています。

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