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ラグビーのヘッドキャップは必要?耳・脳震盪への効果の“本当”とポジション別の選び方

ヘッドキャップで脳震盪は防げるのか。ワールドラグビー自身が「脳の外傷は防げない」と明記している。本当に守れるのは耳と切り傷。研究結果、U15の着用義務、認証マークの見分け方まで整理する。

Text — LEO Updated — Read — 6分
ラグビーのヘッドキャップは必要?|耳・脳震盪への効果の“本当”とポジション別の選び方
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ヘッドキャップをかぶれば脳震盪を防げる――そう信じている人は少なくない。でも、ワールドラグビー自身が認証品に対して「脳の外傷を防ぐことは意図も期待もしていない」と書いている。じゃあ、あれは何のためにあるのか。答えは「耳」と「切り傷」だ。この記事では、ヘッドキャップの本当の役割と限界、研究の結果、そして着けるかどうかの判断材料を整理する。

Pointこの記事の結論

  • ヘッドキャップの役割は、切り傷・すり傷と耳の保護。脳震盪の予防効果は研究で示されていない
  • ワールドラグビー認証品には、後頭部に直径12mm以上の認証マークがある
  • 日本の中学生(U15)は着用が義務。高校生以上は任意が基本
  • 「着けているから大丈夫」と頭から当たるのは逆効果。守るのはタックルの姿勢

Contents 目次
  1. ヘッドキャップは“脳”を守る道具ではない
  2. なぜ“守れない”のか
  3. 研究は何を示しているか
  4. じゃあ何を守ってくれるのか
  5. 日本では着用義務はある?
  6. 認証品の見分け方
  7. ポジション別、着けるかどうかの考え方
  8. 手入れと買い替えのタイミング
  9. 一番の防具は“正しいタックル”

ヘッドキャップは“脳”を守る道具ではない

いきなり核心から。ワールドラグビーのヘッドギア規格のページには、認証品について次の趣旨の一文がある。

“Headgear compliant with this regulation … is not intended nor expected to protect against any form of mild traumatic brain injury or skull fractures.”— World Rugby, Headgear specification

つまり「この規格に適合したヘッドギアは、軽度外傷性脳損傷(脳震盪を含む)や頭蓋骨骨折を防ぐことを意図しておらず、期待もされていない」。認証品には「切り傷とすり傷のリスクを減らすために設計されたもので、衝撃を減らす性質は副次的なものにすぎない」という趣旨の表示も求められている。

作っている側のルールが、最初から「脳は守れない」と言っている。これを知らずに買う人がけっこう多い。

なぜ“守れない”のか

理由のひとつは、ルールがヘッドギアを「柔らかく薄いもの」に限っているから。現行のワールドラグビーのヘッドギア規格では、生地を含めた厚さは非圧縮時で12mm以下。旧版のRegulation 12では、厚さ1cm以下、密度は1立方メートルあたり45kg以下と定めていた。硬いヘルメットのようなものは、ぶつかった相手を傷つける。ラグビーは全員が生身でぶつかるスポーツだからこそ、防具で「武装」させない考え方がある。

もうひとつは、脳震盪のメカニズム。脳震盪は、頭が急に加速・減速したり回転したりしたとき、頭蓋骨の中で脳が揺さぶられて起きる。表面のクッションが多少衝撃をやわらげても、頭そのものの揺れは止めきれない。

研究は何を示しているか

「それでも少しは効くんじゃないか」。そう思うのは自然だ。研究者も同じことを考えて、何度も確かめてきた。

代表的なのが、オーストラリアで行われた大規模な試験だ。2009年にMedicine & Science in Sports & Exercise誌に発表されたMcIntoshらの研究は、U13からU20の男子チームを「通常のヘッドギア」「改良型ヘッドギア」「着けないグループ」にランダムに振り分け、2シーズン追跡した。

4,095人McIntoshら(2009年)の試験に参加した選手の合計(対照群1,493人+通常ヘッドギア群1,128人+改良型1,474人)

結果は、頭部のケガ・脳震盪の発生率に差はなし。論文の結論は「パッド入りヘッドギアは頭部外傷や脳震盪の発生率を下げない」。そのうえで「個人が着けることは選べるが、日常的な着用や着用義務化は推奨できない」とまとめている。ただし、実際に着けた率が低かったことは研究の限界として著者自身が挙げている。

もっと新しいまとめもある。2024年にSports Health誌に載ったシステマティックレビュー&メタ解析は、サッカーとラグビーのランダム化比較試験を集め、合計6,311人・17万3,383時間の曝露データを分析した。ヘッドギアを着けたグループの脳震盪リスク比は1.03。つまり、着けても着けなくてもほぼ同じ、という結果だった。

じゃあ何を守ってくれるのか

ここまで読むと「じゃあ意味ないじゃん」と思うかもしれない。そんなことはない。ヘッドキャップには、ちゃんと役目がある。

  1. 切り傷・すり傷スパイクで頭を踏まれる、頭同士がこすれる、地面にこすりつけられる。密集では頭の皮膚が切れることがある。ワールドラグビーの規格も、まさにここを狙って作られている。
  2. 耳スクラムやラックで耳が何度もこすれ、内出血を繰り返すと、耳が変形することがある。いわゆる「餃子耳」(英語ではcauliflower ear)。もともとスクラムキャップが生まれたのも、この耳を守るためだった。
  3. 髪やテーピングの固定長い髪をまとめたり、頭のケガの保護テープを押さえたりする役目もある。

FW、特にフロントローやロックは、スクラムで頭を相手と相手の間に差し込む。耳がこすれる回数は、BKとは比べものにならない。「耳を守る」という目的なら、ヘッドキャップはかなり理にかなっている。

日本では着用義務はある?

ここは年代で分かれる。

カテゴリー 着用 確認した根拠
中学生(U15) 義務 日本協会「U-15ジュニアラグビー競技ガイド」(2019年7月改定)で「ヘッドギアの着用は、義務とし」と明記。色は白・黒・紺・グレーが望ましいとされる
高校生以上 任意(大会規定を確認) 競技規則第4条ではヘッドギアは「着用が認められる追加の用品」の扱い
小学生(ミニラグビー) 所属スクール・大会の規定を確認 スクールごとにルールがあるので、入会時に確認を

中学生の着用義務は、脳震盪を防げるから、というより、成長途中の選手の頭部の切り傷・すり傷を減らす意味合いが大きいと考えていい。なお同じガイドでは、ヘッドギアの紐の色や長さにも決まりがある。細かいようだが、試合当日に止められないよう、事前に確認しておきたい。

認証品の見分け方

ヘッドキャップを選ぶとき、まず見るべきはここ。

12mm以上ワールドラグビー認証マークの直径(ヘッドギア外側の後ろ面に表示)

ワールドラグビーの規格では、認証を取った製品は、ヘッドギア外側の後ろ面に、直径12mm以上の「World Rugby Approved」マークをしっかり印刷または取り付けることになっている。あわせて、メーカー名や商標の表示も求められる。

通販で安いものを探すと、ラグビー用と書いてあっても認証マークのない製品が出てくることがある。公式戦で使うなら、マークがあるかどうかを写真や商品説明でよく確認しよう。認証済み製品の一覧はワールドラグビーのサイトでも公開されている。

ラグビー ヘッドキャップ

耳と頭皮を守る道具で、脳震盪を防ぐものではない。公式戦で使うなら後頭部のWorld Rugby認証マークを写真や説明で確認。頭囲を測り、耳の穴の位置が合うかも見る。

Q1ワールドラグビー認証のヘッドギアに表示が求められている「本来の目的」は?答えを見る

答えは「切り傷とすり傷のリスクを減らすこと」。衝撃をやわらげる性質は、その副次的な効果にすぎない、という趣旨の表示が求められている。脳震盪を防ぐ道具ではない、と作る側のルールが明言しているわけだ。

ポジション別、着けるかどうかの考え方

最終的には個人の選択。そのうえで、判断の目安を書いておく。

着ける派:耳と頭皮を守りたいVS着けない派:視界と聞こえを優先

着ける派の理由は明快で、スクラムや密集で耳がこすれる、スパイクで頭を踏まれた経験がある、というもの。FW、特にフロントローとロックに多い。着けない派は、視界が狭くなる、声が聞こえにくい、蒸れる、頭が大きくなってタックルの感覚が変わる、を挙げる。BKに多いが、FWでも着けない選手はいる。どちらが正しいではなく、「何を守りたいか」で決めればいい。

選ぶときのポイントは3つ。

  • サイズ:頭囲を測ってから選ぶ。ゆるいとずれて視界をふさぎ、きついと頭痛の原因になる
  • 耳の部分:耳の穴の位置が合っているか。声が聞こえないと、試合中のコミュニケーションに響く
  • あご紐:あごの下で留める。ルール上、硬い留め具や金具は禁止なので、認証品を選べば問題ない

手入れと買い替えのタイミング

ヘッドキャップは汗をたっぷり吸う。練習のあとバッグに入れっぱなしにすると、においとカビの原因になる。使ったら風通しのいい場所で陰干しし、洗えるタイプなら表示に従って手洗いする。ドライヤーの熱や直射日光は、クッション材を傷めるので避けたい。

買い替えのサインは、クッションがへたって薄くなった、縫い目がほつれた、あご紐のマジックテープが弱くなった、の3つ。ずれやすいヘッドキャップは視界をふさぐだけで、守る役目を果たさない。成長期の中学生は頭囲も変わるので、シーズンの始まりに一度かぶって確認しておくといい。

もうひとつ。ヘッドキャップを着けると耳の上から押さえられるぶん、チームメイトの声が聞き取りにくくなることがある。ラインアウトのサインやディフェンスのコールが聞こえないと、それ自体が危険につながる。新しいものに替えたら、試合の前に必ず練習で試しておこう。

一番の防具は“正しいタックル”

ヘッドキャップが脳を守れない以上、脳震盪を減らすための本命は、プレーのやり方そのものだ。頭を相手の正面に入れない、頭を上げて背中をまっすぐにする、肩で当たる。こうした基本は、初心者向けタックルのコツでも詳しく書いた。

そしてもうひとつ。頭を打ったあと、少しでもおかしいと感じたら、プレーをやめること。脳震盪かどうかの判断は、本人や仲間ではなく、医師などの専門家に任せる。これはヘッドキャップを着けていても着けていなくても同じだ。

足もとの装備も同じくらい大事。スクラムで滑らないことは、首を守ることにもつながる。スパイク選びはFWとBKのスパイクの違いの記事で詳しく書いている。ポジションごとの役割についてはポジションと役割も参考に。


ヘッドキャップは「耳と頭皮の防具」であって、「脳の防具」ではない。この一点さえ押さえておけば、着けるか着けないかは自分で選べる。大事なのは、着けたことで気が大きくならないこと。そして頭を打ったら、迷わず止まること。

参考:World Rugby ヘッドギア規格/World Rugby Regulation 12/McIntosh AS et al. (2009) Med Sci Sports Exerc/Al Attar et al. (2024) Sports Health/日本協会 U-15ジュニアラグビー競技ガイド/World Rugby 競技規則 第4条

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LEOEditor-in-Chief

埼玉工業大学深谷高等学校(埼工大深谷。現・正智深谷)ラグビー部出身。WTB→CTB→FLと渡り歩き、在籍中のチームは花園2年連続ベスト4。いまはラグビージャージのデザイン制作(HERCULEGEAR)に携わりながら、ラグビーの面白さを書いています。

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