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ラグビーのタックルのコツ怖さを消すのは“頭の位置”。安全な入り方と2026年の高さルール

タックルが怖いのは度胸の問題じゃない。頭をどこに置くかを体が知らないからだ。頭→肩→腕→足の4工程、よくあるミスの直し方、年代別の注意点、2026年7月施行のタックル高ルール、脳振盪の対応と日本協会GRTPの復帰日数までまとめた。

Text — LEO Updated — Read — 14分
ラグビーのタックルのコツ|怖さを消すのは“頭の位置”。安全な入り方と2026年の高さルール
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初めてのタックル練習。相手が走ってくる。足がすくむ。あの怖さの正体は、たいてい「根性不足」ではない。頭をどこに置けばいいのか、体が知らないことだ。頭の置き場所が決まれば、次に肩、腕、足と、やることが順番に並ぶ。やることが見えると、怖さは半分になる。この記事では、タックルを4つの工程に分解し、初心者がつまずく場面と直し方、年代別の注意点、2026年10月時点のタックルの高さのルール、そして頭を打った時の対応(日本協会の段階的競技復帰)までをまとめて置いておく。読み終えたら「どこに頭を置き、どの高さに入り、頭を打ったら何日休むのか」が自分で判断できるはずだ。

Pointこの記事の要点

  • タックルの基本は4工程。頭を相手の体の横に置く → 肩で当たる → 両腕で抱える(バインド)→ 足で押し切る(ドライブ)。頭を相手の進路の正面に入れる「逆ヘッド」は、日本のU-12・U-15の競技規則では反則になる
  • World Rugbyによると、タックラーの頭がボールキャリアの胸骨より上にあるとき、タックルでの脳振盪リスクは4.2倍。だから狙いは腰〜太ももで、ひざより下まで下げすぎない
  • 2026年7月1日施行のWorld Rugby競技規則第14条1項で、タックラーは罰則ライン(日本協会の訳では「制裁ライン」)より下でタックルする責任を負うと明記された。ラインはエリートが肩、コミュニティーが胸骨の下端か腰(主催者が選ぶ)
  • 脳振盪が疑われたらその日はプレーに戻らない。日本協会の段階的競技復帰(GRTP)では、最短でも中学生以下23日、高校・高専生3週間、18歳以上のクラブ・大学・社会人は原則21日(条件を満たせば14日)

Contents 目次
  1. 怖いのは当たり前。問題は“見えていない”こと
  2. タックルのコツは? 4つの工程:頭→肩→腕→足
  3. 工程1:頭は“相手の腰の横”。正面には入れない
  4. 工程2・3:肩で当たり、腕で“閉じる”
  5. 工程4:足を止めない。“押し切る”までがタックル
  6. 初心者がやりがちなミスと直し方
  7. どの高さに入ればいい? 狙いは「腰〜太もも」
  8. 2026年のタックルの高さのルールは?
  9. レフリーは「低く入ろうとしたか」を見ている
  10. 小学生・中高生・大人で、何が違う?
  11. 怖さを消す練習は“ゆっくり”から
  12. ステップ1:膝立ちで“頭の位置”だけ
  13. ステップ2:しゃがんだ姿勢から前に倒れ込む
  14. ステップ3:歩く相手、ジョグの相手
  15. ステップ4:タックルバッグ、タックルリングで“ドライブ”
  16. 頭を打ったら、その日は終わり
  17. 復帰は「段階的競技復帰(GRTP)」で、医師の許可を得てから
  18. 怖さが消えた日、タックルは“得意技”になる
  19. よくある質問

怖いのは当たり前。問題は“見えていない”こと

タックルが怖いのは正常で、直すべきは怖さではなく「何をするか決まっていない状態」だ。自分より速いもの、重いものがぶつかってくる。逃げたくなるのが普通で、それを気合で押し殺す必要はない。

ただ、経験者ならわかると思うが、怖さが一番大きいのは「どう当たればいいか分からないまま、相手が近づいてくる数秒間」だ。何をすればいいか決まっていないから、最後の最後で目をつぶる。腰が引ける。腕だけ伸ばす。そして、頭が変なところに入る。ここが一番危ない。

しかも、危ないのは当たる側だ。World Rugbyの指導者向け教材(Passport)は、頭のケガの74%がタックルの場面から起きており、タックルでの頭のケガのおよそ70%はタックラー側だと示している。「タックルされる方が痛い」というイメージは、半分しか正しくない。

逆に言えば、当たる前の0.5秒でやることが体に入っていれば、恐怖は「やることリスト」に置き換わる。現場でよく「タックルは技術」と言われるのはそのためだ。度胸は後からついてくる。

タックルのコツは? 4つの工程:頭→肩→腕→足

答えは「頭を相手の体の横に置き、同じ側の肩で腰〜太ももに当たり、両腕で抱え、足を止めずに押し切る」。この順番を毎回同じにすることがコツのすべてだ。

工程1:頭は“相手の腰の横”。正面には入れない

一番大事な工程から。タックラーの頭は、ボールキャリア(ボールを持って走ってくる選手)の体の横に置く。イメージは、相手の腰からお尻の外側に、自分のほおを添えるような位置。相手の正面、つまりボールや膝がくる進路の真ん中に頭を入れてはいけない。

なぜか。正面に頭を入れると、相手の膝、腰、ボールを持った腕が、全部自分の頭に向かってくるからだ。相手が少しでもステップを切れば、頭同士が当たる。この「頭が相手の進行方向側に入る」形は逆ヘッドと呼ばれ、日本協会のU-12ミニラグビー・U-15ジュニアラグビーの競技規則では、反則(危険なプレー)として明記されている。

もう一つ、目線。当たる瞬間まで目を開けて、相手の腰を見る。目をつぶると頭の位置が狂う。あごは胸につくほど引かず、首をすくめない。背中はまっすぐ、頭は背骨の延長線上。「頭を下げる」のではなく「腰を落として、頭の高さを下げる」。この違いが大きい。日本協会の年代別規則が、頭を肩や腰より下げ続ける「ローヘッド」を反則にしているのも同じ理由だ。

工程2・3:肩で当たり、腕で“閉じる”

頭の位置が決まったら、当たるのは肩だ。頭と同じ側の肩で、相手の太もも〜腰のあたりに入る。肩が当たるのと同時に、相手に近い側の足を大きく一歩踏み込む。この一歩が遠いと、肩が届かず、腕だけで捕まえにいく「手タックル」になる。

腕の役割は、相手を「閉じる」こと。当たった瞬間に両腕で相手の脚をしっかり抱え、自分の方へ引きつける。これがバインドだ。腕を回さずに体だけぶつけるのは、競技規則でも反則になる。World Rugby競技規則(2026年版)第9条16項は「ボールを持っている相手側プレーヤーをつかもうとしないでチャージしたり突き倒したりしてはならない」と定めている。

腕で抱えると、相手と自分が一つの塊になる。塊になれば、ぶつかった衝撃は肩一点ではなく体全体で受けられる。怖さを減らすのは、実は腕だ。抱えずに当たると衝撃が逃げず、痛い思いをして、次からもっと怖くなる。

工程4:足を止めない。“押し切る”までがタックル

肩が当たって腕で抱えたら、そこで止まらない。小刻みに足をかき続け、相手を押し倒すところまで運ぶ。これがドライブ。ここで足が止まると、相手の脚の力に負けて自分が弾かれる。弾かれた体勢が、実はケガにつながりやすい。

そして倒した後。タックラーには、倒れたらすぐにボールキャリアとボールを放し、離れるか立ち上がる責任がある(2026年版の競技規則第14条5項b・c)。倒したまま抱え続けると反則だ。立ち上がってボールに絡みにいく動きは、ジャッカルにつながる。条件はジャッカルのルールの記事で掘り下げている。

  1. 頭の位置相手の腰の横に、ほおを添える位置。目は開けて、相手の腰を見る
  2. 肩で当たる頭と同じ側の肩で、太もも〜腰。近い足を大きく踏み込む
  3. 腕で抱える(バインド)両腕で脚を抱えて引きつけ、一つの塊になる
  4. 足で押し切る(ドライブ)足を止めず、倒すまで運ぶ。倒したらすぐ放して立つ

初心者がやりがちなミスと直し方

うまくいかない時は、たいてい4工程のどこか1つが抜けている。症状から原因を逆算すると早い。

よくあるミス 何が起きるか 直し方
頭から突っ込む 背中が丸まり、首に真上から力がかかる。一番避けたい形 「頭を下げる」をやめ「腰を落とす」。背中まっすぐ、目線は相手の腰
顔をそむける・目をつぶる 目線が切れて頭の位置がずれる 膝立ちの練習で、当たる瞬間まで目を開ける癖をつける
相手の正面に頭を置く(逆ヘッド) 相手の膝や腰、頭とぶつかる 頭は相手の体の横。正面から来たら半歩ずれて、頭を置く側を先に決める
腕だけで捕まえる(手タックル) 弾かれる、肩や腕を痛めやすい 最後の一歩を相手の足元まで踏み込み、肩を先に当ててから腕を閉じる
胸より上に入る 頭部接触の危険が増え、反則の対象になる 狙いを腰〜太ももに下げる。腰を落とす距離を早めに作る
ひざより下まで下がる 相手の膝が頭に来る。頭の危険が再び上がる 目標は「腰〜太ももの上のほう」。足首を刈りにいかない
当たって足が止まる 相手の脚力に負けて弾かれる バッグ相手に「当たってから5歩かく」を繰り返す

どの高さに入ればいい? 狙いは「腰〜太もも」

結論は、腰から太ももの上のあたりに肩で入り、頭は相手の体の横に置く。これが安全面でも、2026年のルール面でも正解になる。

根拠はWorld Rugbyのデータだ。同団体の教材は、タックラーの頭がボールキャリアの胸骨より上にあるとき、タックルで脳振盪を負うリスクが4.2倍になると示している。低く入ると、タックラーの頭は相手の上半身・腰・太ももの近くという「比較的安全な位置」に来る。一方で、タックルがひざの高さまで下がると、危険は再び上がるとも書かれている。低ければ低いほど良い、ではない。

肩の線 … エリートの罰則ライン 胸骨の下端 … コミュニティー(選択肢1) 腰 … コミュニティー(選択肢2) ひざ … ここまで下がると頭の危険が再び上がる 狙う範囲:腰〜太もも 頭は相手の体の“横”(丸の位置) TACKLE HEIGHT — 2026年版 競技規則 第14条1項
ボールキャリアを正面から見たときの罰則ライン(World Rugby競技規則2026年版 第14条1項と、試合主催者が選ぶGame-onの選択肢をもとに作図)。黄緑の帯が狙う範囲、丸がタックラーの頭を置く位置の目安。どのラインが使われるかは大会ごとに確認してほしい。

2026年のタックルの高さのルールは?

2026年7月1日から、World Rugby競技規則第14条1項に「タックラーは該当するハイタックルの罰則ラインより下でタックルする責任がある」と明記された。ラインはエリートラグビーでは肩の線、コミュニティーラグビーでは腰か胸骨の下端。2026年6月17日のWorld Rugby理事会で承認されたもので、日本協会も同年7月15日の通達で国内に周知している。

関連する条文を整理するとこうなる。第9条13項は、早いタックル、遅いタックル、危険なタックルを禁じ、危険なタックルに頭部への接触につながるタックルと、オープンプレー中に罰則ラインより上へのタックルを含めている。第14条5項aでは、タックラーの義務の一番目に「罰則ラインより下でタックルすること」が加わった。そして第14条1項には、ボールキャリアにも安全にタックルへ入る責任があると書かれている。

試合のカテゴリー タックルの罰則ライン・主な決まり 根拠
エリート(国際試合など) 肩の線より下。頭部への接触は危険なタックル World Rugby競技規則 第9条13項・第14条1項
コミュニティー(世界共通) 腰か胸骨の下端のどちらかを試合主催者が選ぶ。体を大きく沈めて当たるボールキャリアの反則化、ダブルタックルの制限も選択可 競技規則 第14条1項、Game-onバリエーション(2026年7月1日施行)
日本国内(リーグワンを除く全カテゴリー) 2023年9月1日から「胸骨より下」を目安にした試験的ガイドライン。2025年7月に継続を決定 日本協会の通達
U-15・U-12(日本協会の年代別規則) 胸部より上へのタックル、ノーバインドタックル、逆ヘッドのタックル、ローヘッドのプレーを危険なプレーとして禁止 U-12ミニラグビー/U-15ジュニアラグビー競技規則の一部改正

自分の大会でどのラインが使われているかは、チームの指導者か主催者に一度確認しておきたい。ただ、技術的な答えは一つだ。腰から太ももを狙って、頭を横に置く。これを守っていれば、どのラインでもまず引っかからない。

この変更には裏付けがある。World Rugbyは2025年12月、11の協会で18か月にわたって行った試験の結果として、約15万回のタックルを分析し、危険度の高い「アップライト(上体が起きた)タックル」が男子で8%、女子で10%減ったと公表した。先行して低いタックル高を導入したフランスのアマチュアの試験では、頭と頭の接触が64%、脳振盪の疑いが23%減ったと、World Rugbyの教材が紹介している。

4.2倍タックラーの頭がボールキャリアの胸骨より上にあるときの、タックルでの脳振盪リスク(World Rugby Passport)

レフリーは「低く入ろうとしたか」を見ている

頭への接触があった場面は、World Rugbyの「ヘッドコンタクト・プロセス」という手順で判断される。流れは4段階で、頭への接触があったか → 反則プレーか → 危険度はどれくらいか → 軽減する要素はあるか。軽減要素には、ボールキャリアが直前に大きく沈み込んだ場合や、タックラーがはっきりと体の高さを下げようとしていた場合などが挙げられている。つまり、低く入ろうとしていたかどうかは、ちゃんと見られている。逆に言えば、直立したまま当たりにいった時点で言い訳はほとんど残らない。

反則でカードが出た時の扱いも変わっている。2026年7月に正式採用された20分レッドカードの仕組みも、タックルと無関係ではない。

低ければ何でもいい、というわけでもない。World Rugbyは2026年10月、横か後ろからつかんだボールキャリアの脚の上に、腰や体重を落として倒す「ヒップドロップ」を、第9条13項の危険なタックルとして明記する改正を発表した(11月1日施行)。経緯はヒップドロップ明文化のニュースで伝えている。

ロータックル派VS抱え込み(上半身)派

ロータックル派:脚を刈れば相手は確実に止まる。頭と頭がぶつかる確率も下がる。今のルールの流れにも合っている。

抱え込み派:ボールごと抱えればオフロードを封じられる。ただし、コミュニティーの試合では主催者が選んだライン(腰か胸骨の下端)より上へのタックルがそもそも反則の対象になるし、エリートの試合でも胸の高さは頭部接触の危険と隣り合わせ。初心者は、まずロータックル一択でいい。

小学生・中高生・大人で、何が違う?

技術の中身(頭を横、肩、腕、足)は同じ。違うのは試合のルールと頭を打った後の休む期間だ。特に子どもは、大人より慎重に扱うことが日本協会の規則にもはっきり書かれている。

年代 試合のルール面 練習で優先したいこと 脳振盪後の最短復帰(日本協会GRTP)
小学生(U-12ミニラグビー) 日本協会の独自規則。胸部より上へのタックル、ノーバインド、逆ヘッド、ローヘッドは反則。試合中のヘッドギア着用が義務 膝立ち・歩きの段階を長めに。倒れ方(受け身)を先に覚える 23日
中学生(U-15ジュニア) U-12と同様の危険なプレーの禁止(胸部より上、ノーバインド、逆ヘッド、ローヘッド) 体格差が大きい時期。組み合わせを体格でそろえ、スピードは段階的に 23日
高校・高専生 日本協会の19歳未満国内高専・高校以下用競技規則(令和4年改訂版)で、頭突き・体当たり・頭の下がったタックル、ローヘッドのプレーを禁止 コンタクトの量が増える時期。ドライブより先に頭の位置を毎回そろえる 3週間(21日)
18歳以上(大学・クラブ・社会人) コミュニティーの罰則ライン(胸骨の下端か腰)。リーグワンを除き、国内は「胸骨より下」の目安 久しぶりに再開する人ほど、膝立ちから戻る 21日(条件を満たせば14日)

復帰日数の起点は受傷日を0日目として数える(日本協会、2022年9月から全カテゴリー)。中学生以下は、運動より先に学校・学習への復帰(Return to Learn)を優先するよう、日本協会の2026年4月1日付の資料に示されている。

怖さを消す練習は“ゆっくり”から

いきなり全力で走ってくる相手に入る必要はない。怖さを消すのは、段階を細かく刻むことだ。以下は現場でよく使われる順番の一例で、必ず指導者のいる場で、体格の近い相手と行ってほしい。

ステップ1:膝立ちで“頭の位置”だけ

両膝をついた状態で、立っている相手(またはタックルバッグ)の腰の横に頭を置き、肩を当てて腕を回す。スピードはゼロ。ここでやるのは「頭を横に置く」「目を開ける」「腕を閉じる」の3つだけ。倒さなくていい。左右どちらの肩でもできるようにしておくと、試合で逆ヘッドになりにくい。

ステップ2:しゃがんだ姿勢から前に倒れ込む

低い姿勢から一歩踏み込んで、相手を抱えて横に倒れる。倒れ方も練習する。受け身が身につくと、地面への恐怖が減る。

ステップ3:歩く相手、ジョグの相手

相手には歩いてもらい、正面ではなく少し斜めからの角度で入る。慣れたらジョグ。スピードを上げるのは、頭の位置が毎回ブレなくなってから。

ステップ4:タックルバッグ、タックルリングで“ドライブ”

人に当たるのとは別に、バッグ相手に「当たってから足をかき続ける」感覚を作る。人相手の練習で足が止まる選手は、ここで足を動かす癖をつける。

タックルバッグ

チームの練習用具として、重さと大きさを選手の年代・体格に合わせて選ぶ。子ども向けには小さく軽いサイズを。タックル練習は必ず指導者のいる場で、段階を追って使う。

なお、ボールキャリア側にも責任がある。2026年版の競技規則第14条1項には、ボールキャリアにも安全にタックルへ入る責任があると書かれ、コミュニティーでは体を大きく沈めて当たるボールキャリアを反則にする選択肢もできた。頭から突っ込む、頭を下げてぶつかりにいく走り方は、自分も相手も危ない。タックル練習は、キャリア役も一緒に「頭を上げて、低く当たる」を学ぶ時間だ。練習前のウォームアップには、World Rugbyの「Activate」も使える。

頭を打ったら、その日は終わり

脳振盪(のうしんとう)が疑われたら、その場でプレーをやめ、その日は練習にも試合にも戻らない。どれだけ技術を磨いても頭を打つことはあり、大事なのはその後の判断だ。

World Rugbyはこれを「Recognise and Remove(気づいて、退かせる)」、そして「迷ったら外す」という考え方で広めている。「大丈夫です」と本人が言っても、周りが止める。日本協会のU-12・U-15の競技規則にも、脳振盪の疑いで競技を離れた選手は当日の試合に出られず、その後の復帰は日本協会の段階的競技復帰(GRTP)に従うと明記されている。

次のような様子があれば、すぐに救急車を呼んで病院へ。World Rugbyの脳振盪ガイドラインが挙げる「レッドフラッグ」だ。

  • 首の強い痛み、腕や脚のしびれ・脱力
  • 意識がだんだんぼんやりする、混乱やイライラが強くなる
  • 強くなる頭痛、繰り返す嘔吐、けいれん、物が二重に見える、ろれつが回らない、いつもと違う行動

首を痛めた疑いがある時は、無理に起こしたり動かしたりしない。World Rugbyは、その場合は脊椎のケアの訓練を受けた救急の専門職だけが選手を運ぶべきだとしている。

プロの試合では「HIA(ヘッド・インジュリー・アセスメント)」という評価の仕組みがあり、試合中に場外で行う最初の評価(HIA1)は12分の枠で行われ、試合後の同日の評価(HIA2)、受傷から36〜48時間後の評価(HIA3)と続く。World Rugbyは「脳振盪は受傷直後に診断できることはあるが、HIA2とHIA3が終わるまで否定はできない」としている。学生やクラブの試合では、HIAの仕組みがない場面がほとんどだ。だからこそ「疑わしきはプレーさせない」。

復帰は「段階的競技復帰(GRTP)」で、医師の許可を得てから

復帰は、日本協会のGRTPに沿って、休養の後に軽い運動から段階を踏む。たとえば中学生以下では、受傷日(0日目)と翌日の相対的な安静の後、エアロバイクなどの有酸素運動、個人の競技別運動、ノンコンタクト練習と進み、症状がないことを確かめて医師の許可(復帰証明)を得てからフルコンタクト練習に進み、その段階を終えて症状がなければ改めて医師の許可を得て、最短で23日目に試合に戻る流れが示されている。途中で症状がぶり返したら、無理に進めない。

年代別の最短日数は上の表のとおりで、18歳以上のクラブ・大学・社会人が最短14日で戻れるのは、選手の安全を最優先するメディカル体制のあるチームの管理下で、脳振盪の既往がなく、事前にSCAT5のベースライン(平常時の検査結果)があり、受傷36〜48時間後の検査で悪化がないなどの条件を満たす場合に限られる。具体的な判断は、必ず医師と、チームのメディカル担当に任せてほしい。

23日日本協会のGRTPで、中学生以下が脳振盪から試合に復帰できる最短日数(受傷日を0日目として数える)
らぐナビ #08「タックル」(静岡ブルーレヴズ公式) YouTubeで見る

怖さが消えた日、タックルは“得意技”になる

タックルが上手い選手を見ていると、誰もが派手に吹っ飛ばしているわけではない。低く、横から、腕で閉じて、足で運ぶ。毎回同じ形で入っている。それが安定感であり、周りからの信頼になる。フランカーの名選手たちがタックル王と呼ばれるのも、その“同じ形”を80分続けられるからだ。

ポジションごとにタックルの場面は違う。自分の役割と照らし合わせたい人は、ポジションと役割の記事も読んでみてほしい。タックルの後に何が起きるか、ラックやオフサイドの決まりはルールの基本で押さえられる。

怖さはゼロにはならない。ならなくていい。頭の位置を決めて、やることを順番に並べる。それだけで、相手が近づいてくる数秒間は「やることの時間」に変わる。

よくある質問

ラグビーのタックルで、頭はどこに置けばいいですか?

ボールキャリアの体の横、腰からお尻の外側にほおを添える位置です。相手の進路の正面に頭を入れる「逆ヘッド」は、相手の膝や腰、頭とぶつかる危険があり、日本協会のU-12・U-15の競技規則では反則になります。目は当たる瞬間まで開けて、相手の腰を見ます。

2026年のルールでは、タックルはどの高さまでなら反則になりませんか?

2026年7月1日施行のWorld Rugby競技規則第14条1項で、タックラーは罰則ラインより下でタックルする責任があると定められました。ラインはエリートラグビーが肩の線、コミュニティーラグビーが腰か胸骨の下端で、どちらを使うかは試合主催者が選びます。日本ではリーグワンを除く全カテゴリーで、2023年9月から「胸骨より下」を目安にしたガイドラインが使われています。

タックルは低ければ低いほど安全ですか?

そうとは限りません。World Rugbyは、タックラーの頭が相手の胸骨より上にあると脳振盪のリスクが4.2倍になる一方、ひざの高さまで下がると危険が再び上がると示しています。狙いは腰から太ももの上のあたりです。

頭を打ったけれど本人は「大丈夫」と言っています。続けさせてもいいですか?

続けさせてはいけません。脳振盪が疑われたら、その日は練習にも試合にも戻らないのが原則で、World Rugbyも日本協会もそう定めています。首の強い痛み、繰り返す嘔吐、意識がぼんやりしていくなどの様子があれば、すぐに救急車を呼んでください。

脳振盪のあと、何日で試合に戻れますか?

日本協会の段階的競技復帰(GRTP)では、受傷日を0日目として、最短で中学生以下が23日、高校・高専生が3週間、18歳以上のクラブ・大学・社会人が原則21日です。18歳以上は、既往がなくベースライン検査があるなどの条件を満たせば最短14日です。いずれも症状がないことと、医師の許可が前提です。

参考(いずれも2026年10月1日確認):World Rugby 競技規則 第14条 タックル/World Rugby 競技規則 第9条 不正なプレー/World Rugby「Community tackle height law wordings approved」(2026年6月)/World Rugby ニュース(2025年12月4日、タックル高の試験結果)/World Rugby Passport「Why trial the lower tackle height?」/World Rugby Head Contact Process/World Rugby Concussion Guideline/World Rugby HIA FAQ/日本協会「世界的試験実施ルールの正式採用・競技規則改正に関して」(2026年7月15日)/日本協会「タックルの高さに関する試験的ガイドラインの導入」/日本協会「試験的ガイドラインの継続について」(2025年7月)/日本協会 U-12ミニラグビー競技規則 一部改正/日本協会 U-15ジュニアラグビー競技規則 一部改正/日本協会「U12 競技規則補則」/日本協会 年代別競技規則(令和4年改訂版:U-15・19歳未満国内高専・高校以下)/日本協会「脳振盪からの段階的競技復帰(GRTP)改訂について」/日本協会「段階的競技復帰(GRTP)中学生以下での運用について」(2026年4月1日)

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LEOEditor-in-Chief

埼玉工業大学深谷高等学校(埼工大深谷。現・正智深谷)ラグビー部出身。WTB→CTB→FLと渡り歩き、在籍中のチームは花園2年連続ベスト4。いまはラグビージャージのデザイン制作(HERCULEGEAR)に携わりながら、ラグビーの面白さを書いています。

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