ラグビーのパスは「腕で投げる」ものではありません。後ろの手で押し出して、指先で回転をかけ、最後に指で受け手を指す。これだけ覚えれば、昔ながらの「大きく振りかぶるパス」から卒業できます。この記事では、試合でいちばん使うスピンパスを中心に、正しい持ち方から投げ方、一人でもできる練習までを順番に説明します。
- パスの力は腕の振りではなく、後ろの手の押し出しから生まれる
- ボールは手のひらではなく指で持つ。手のひらとボールの間にすき間ができればOK
- 狙うのは受け手の体ではなく、受け手が走り込む少し前
- 投げ終わりは両手の指先が狙った場所を指す。これが正しく投げられたかの確認になる
Contents 目次
まず持ち方。ボールは「指」で持つ
パスがうまくいかない人の多くは、ボールを手のひらでべったり抱えています。これでは指に引っかかりができず、回転もコントロールも生まれません。
- 両手を大きく開くボールの左右から、指を縫い目に沿うように広げて添えます。
- 親指は上、ボールの後ろ側へ両手の親指が上を向き、ボールの中心より少し後ろに来るように持ちます。
- 手のひらを浮かせる手のひらとボールの間に、指一本分くらいのすき間ができれば正解です。
- ボールは体の前、少し先端を下げて胸からへその前あたりで構えます。先端をやや下に向けると、まっすぐ飛ぶ軸ができます。
スピンパスの投げ方:押して、転がして、指さす
スピンパスは、ボールに縦軸の回転をかけて遠くまでまっすぐ飛ばすパスです。バックスはもちろん、今はフォワードも当たり前に使います。流れは次の4つです。
- 投げる前に、受け手を見る先に目で受け手を確認してから投げます。ボールを見たままのパスは、ほぼ確実にずれます。
- ボールを外側の腰の近くへ左に投げるなら右の腰の近くまで引きます。大きく振りかぶる必要はありません。引きすぎると相手に読まれ、動作も遅くなります。
- 後ろの手で押し出す右手でボールを左方向へ押し出します。このとき前の手は添えるだけ。腕を回すのではなく、手首と指で押し出すイメージです。
- 指先で回転をかけ、指で狙いをさすボールが手から離れる瞬間、後ろの手の指先でボールの表面を転がすようにすると回転がかかります。投げ終わりは両手の指先が狙った場所を指し、手のひらは外側を向きます。
腕を振るのではなく、ボールを「押し出して」「指で転がす」。— スピンパスのいちばん大事な感覚
上半身はひねりすぎないのがコツです。肩と胸は走る方向(前)に向けたまま、腕と手首でボールを運びます。体をひねって投げると、自分の走るコースが横に流れて、外の味方のスペースをつぶしてしまいます。
どこに投げる?「受け手の前」を狙う
よくある勘違いが「受け手の胸に投げる」ことです。受け手は走っているので、胸をめがけて投げるとボールが後ろにずれ、スピードを落として取ることになります。
受け手側にも役割があります。パスをもらう前から両手を前に出して「ここに投げて」と的を作ること。手が出ていると投げ手は狙いやすく、キャッチからパスまでの動作も短くなります。
場面で使い分ける、主なパスの種類
試合ではスピンパスだけでなく、距離と状況に合わせてパスを使い分けます。まずは下の5つを知っておけば十分です。
| パス | 回転 | 距離 | 使う場面 |
|---|---|---|---|
| スピンパス | あり | 中〜長 | バックスのライン攻撃。外の味方まで速く正確に届けたいとき |
| フラットパス(回転なし) | なし | 短〜中 | すぐ隣の味方へ。回転をかけない分、取りやすく素早く出せる |
| ポップパス | なし | 短 | 近くを走り込んでくる味方へ、ボールを浮かせるように渡す |
| スクラムハーフのパス | あり | 中〜長 | ラックやスクラムから、地面のボールを拾い上げずにそのまま投げる |
| オフロードパス | なし | 短 | タックルを受けながら、倒れる前に片手や両手でつなぐ |
「スクリューパス」と呼ばれることもあるスピンパスですが、近い距離で無理に回転をかける必要はありません。近くはフラットやポップ、遠くはスピンと覚えておくと、試合でのミスが減ります。
よくある失敗と直し方
腕を大きく振りかぶってしまう
時間がかかるうえ、相手に投げる方向を読まれます。ボールを腰の近くまで引いたら、そこから真横に押し出すだけで十分届きます。
ボールが回転しない・縦に揺れる
手のひらで持っているか、最後に指先が抜けていないことがほとんどです。持ち方を見直し、投げ終わりまで後ろの手の指先がボールに触れ、最後に指先から抜けているかを確認しましょう。
パスが後ろにそれる
受け手の体を狙っているか、自分の体が横に流れています。狙いは「走り込む先」。肩を前に向けたまま投げる意識を持つと直ります。
投げたあとに止まる
投げたら終わりではありません。すぐにサポートに走ると、次のパスや、タックルされた味方のフォローにつながります。
一人でもできる練習、二人でやる練習
パスは回数がものを言います。毎日少しずつでも、正しい形で投げる回数を増やしましょう。
- 寝転んで真上にスピンパス(一人)仰向けになり、真上にスピンパスを投げて自分でキャッチします。ボールがまっすぐ上がってまっすぐ落ちてくれば、回転の軸がそろっている証拠。手首と指の使い方だけに集中できます。
- 壁パス(一人)壁から3〜5mほど離れ、壁の同じ場所を狙って左右交互に投げます。跳ね返りを取る練習にもなります。
- 片ひざ立ちのパス(二人)二人とも片ひざをついて向かい合い、上半身だけで投げ合います。腕ではなく押し出しと指で投げる感覚がつかめます。
- 歩きながら→走りながら(二人以上)横に並んで歩きながら投げ合い、慣れたらジョギング、ダッシュへとスピードを上げます。受け手は必ず手を前に出して的を作りましょう。
最初は5m、慣れたら10m、15mと距離を伸ばします。遠くに投げようとして形が崩れるなら、距離を戻すのが上達の近道です。
パスは、ラグビーでいちばん回数の多いプレーのひとつです。そしていちばん、練習した分だけ裏切らないスキルでもあります。「押して、転がして、指さす」。今日の練習から、この3つだけ意識してみてください。

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