ラグビーのキックは、種類こそ多いものの、根っこは同じです。ボールを投げ上げずに「落とす」こと、足首を伸ばして固めること、蹴り足を狙った方向へ振り抜くこと。この3つができれば、パントもグラバーもプレースキックも安定します。この記事では、試合で使う主なキックの種類と、それぞれの蹴り方、練習方法をまとめました。
- キックが安定しない原因の多くは、蹴る前のボールの落とし方にある
- 当てるのは足の甲(靴ひもの部分)。足首を伸ばして固めると力がまっすぐ伝わる
- 軸足のつま先と振り抜く方向を、狙う方向にそろえる
- 遠くへはスパイラル、確実に地域を取るならハイパントやボックスキック、裏のスペースにはグラバーやチップを使う
Contents 目次
キックの種類と使いどころ
まずは全体像です。同じ「蹴る」でも、ボールの軌道と目的がまったく違います。
| キック | ねらい | 主に蹴る人 |
|---|---|---|
| ハイパント | 高く上げて味方が追いつく時間を作り、空中でボールを競る | スタンドオフ、センター |
| ボックスキック | ラックの後ろから、タッチライン側へ高く蹴り上げる | スクラムハーフ |
| ロングキック(スパイラル) | 回転をかけて遠くへ。陣地を大きく戻す、タッチに蹴り出す | スタンドオフ、フルバック |
| グラバーキック | ボールを地面に転がし、ディフェンスの裏へ出す | バックス全般 |
| チップキック | 目の前の相手の頭上を短く越し、自分で拾いにいく | バックス全般 |
| ドロップキック | 地面に落として跳ね上がった瞬間に蹴る。ドロップゴールや試合再開で使う | スタンドオフなど |
| プレースキック | ティーに置いて蹴る。コンバージョンとペナルティゴール | チームのキッカー |
全部に共通する基本:落とす、固める、振り抜く
- ボールは「落とす」。投げ上げない両手で持ったボールを、蹴り足の前にそっと落とします。上に放り投げると、落ちてくる位置と向きが毎回変わり、当たる場所がずれます。落とす高さは腰より下が目安です。
- 足の甲で当てる当てるのは足の甲、靴ひもが通っている硬い部分です。つま先で蹴ると、ボールはどこへ飛ぶかわかりません。
- 足首を伸ばして固めるつま先を伸ばし、足首を固めたまま当てます。足首がゆるむと、力が逃げて距離も方向も出ません。
- 軸足と振り抜きを、狙う方向へ軸足のつま先を狙う方向に向け、蹴り足は当てたあとも止めずに狙う方向へ振り抜きます。
- 最後までボールを見る顔を早く上げると体が開き、当たりが薄くなります。当たる瞬間まで目を離さないのが基本です。
いいキックは、蹴る前に決まっている。ボールをどう落とすかがすべて。— キックが安定しない人へ
パントの蹴り方:ハイパントとスパイラル
ハイパント
ボールをほぼ縦か、少し前に傾けて持ち、真下に落として足の甲で真上寄りに蹴り上げます。距離より高さと滞空時間が大事です。味方が落下地点に走り込める時間を作ることが目的なので、蹴ったらすぐ追いかける前提で組み立てます。
スパイラルキック(ロングキック)
ボールを体に対して斜め(先端を内側に向けて40〜45度くらい)に持ち、落としたボールの中心から少しずらした場所を足の甲で蹴ります。ボールが長い軸を中心に回転しながら飛び、風の影響を受けにくく、遠くまで伸びます。まずは回転がかかることを優先し、距離はあとからついてきます。
ボックスキック
スクラムハーフが、ラックの後ろでタッチライン側に背中を向けるように立ち、高く蹴り上げるキックです。相手に近い位置で蹴るため、ボールを拾ってから蹴るまでの速さが大切になります。
地面を使うキック:グラバーとドロップ
グラバーキック
ボールを縦に近い向きで持ち、低い位置から落として、ボールの上半分を足の甲で押しつぶすように蹴ります。ボールは地面を転がりながら不規則に跳ねるので、ディフェンスの裏にできたスペースへ、味方が追いつける強さで出すのがコツです。
ドロップキック
ボールを縦にして真下に落とし、地面に当たって跳ね上がった直後を蹴ります。タイミングがすべてなので、最初は蹴らずに「落として、跳ねた瞬間に足を合わせる」動きだけを繰り返すと早く上達します。
プレースキック:助走とルーティンで決める
コンバージョンやペナルティゴールで使うプレースキックは、毎回同じ動きを再現できるかがすべてです。
- ボールの置き方を決めるティーの上で、ボールを縦に立てるか、少しゴール側に傾けるかを決め、毎回同じにします。
- 助走の歩数を固定する下がる歩数と横にずれる歩数を決めておきます。試合の緊張の中でも、数えるだけで同じ動きが再現できます。
- 軸足はボールの横、少し後ろ軸足のつま先はゴールの方向へ。ボールに近すぎると詰まり、遠すぎると届きません。
- ボールの中心よりやや下を蹴る足の甲の内側寄りで、ボールの中心より少し下を蹴ると、ボールが上がりながらまっすぐ飛びます。
- ゴールまで振り抜く蹴ったあとも、足と体がゴール方向へ流れていくように振り抜きます。
プレースキックには時間の制限もあります。World Rugbyが2023年から適用している指針では、コンバージョンはトライが認められてから90秒以内、ペナルティゴールは蹴ることを示してから60秒以内に蹴る必要があります(Planet Rugby)。所属する大会の規則もあわせて確認しておきましょう。
よくある失敗と直し方
ボールがあらぬ方向へ飛ぶ
ボールを投げ上げているか、つま先で蹴っていることがほとんどです。落とす高さを低くし、足の甲に当てることだけに集中します。
当たっているのに飛ばない
足首がゆるんでいるか、当てたところで足を止めています。つま先を伸ばして足首を固め、狙う方向へ最後まで振り抜きましょう。
体が後ろに倒れる
ボールを高く蹴ろうとして上体が反っています。胸をボールにかぶせるように、少し前傾のまま蹴ると安定します。
一人でもできる練習、二人でやる練習
- 落とすだけ練習(一人)ボールを持って落とし、蹴らずに足の甲の上で受け止めます。毎回同じ場所に落ちるようになれば、キックの半分は完成です。
- 真上パント(一人)自分の真上に軽く蹴り上げてキャッチします。まっすぐ上がれば、足の甲の芯に当たっている証拠です。
- 対面キック&キャッチ(二人)10〜15m離れて、相手の胸に届くように蹴り合います。慣れたら距離を伸ばし、スパイラルやハイパントも混ぜます。
- ターゲットを置く(一人・二人)コーンやマーカーを置き、グラバーでそこへ転がす、ハイパントでその近くに落とす、と狙いを決めて蹴ります。
上手な選手の試合映像を見るときは、ボールより足と体の動きを追ってみてください。ボールの持ち方、落とす高さ、軸足の向き、蹴ったあとの足の流れ。キッカーごとに違いはあっても、この記事で書いた基本は驚くほど共通しています。
キックは、一人でも練習できる数少ないスキルです。落として、固めて、振り抜く。毎日10本でも、形をそろえて蹴る回数を積み重ねてみてください。

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