2015年9月19日、イングランド南部の海辺の町ブライトン。後半40分を過ぎて29-32、日本は同点のPGではなくスクラムを選び、最後はカーン・ヘスケスが左隅に飛び込んだ。34-32。あれから11年、あの日ピッチに立った23人のうち、今もスパイクを履いているのは誰なのか。調べてみると、意外な名前が意外な場所にいた。
- 2015年W杯の南アフリカ戦は34-32。出場した23人と、当時のヘッドコーチ、エディー・ジョーンズの「その後」を2026年9月時点でたどった
- リーチ マイケル、松島幸太朗、稲垣啓太、山下裕史、日和佐篤、三上正貴、田村優らが、所属チームの公式情報などで現役を確認できた
- 堀江翔太、小野晃征、畠山健介は指導者に。五郎丸歩はラグビーの外にも活動を広げている
- エディー・ジョーンズは2024年から再び日本代表HC。あの日の主将リーチと、2027年W杯を目指している
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34-32、あの80分を数字で振り返る
会場はブライトン・コミュニティ・スタジアム。World Rugbyの記録で観衆は29,290人、主審はフランスのジェローム・ガルセスだった。プールBの初戦で、相手は過去2回W杯を制していた南アフリカ。日本はそれまでW杯で1勝しかしていなかった。
World Rugbyの試合データで得点の流れを追うと、こうなる。
- 前半:五郎丸のPG、リーチのトライ(モールから)とゴールで10点。南アフリカは2トライで12点。10-12で折り返す
- 後半:五郎丸がPGを重ね、69分には自らトライ。それでも南アフリカはトライとPGで突き放し、残り時間はわずか
- 最後:日本は29-32から攻め続け、84分にヘスケスがトライ。34-32
五郎丸は1トライ、2ゴール、5PGで24得点。南アフリカは4トライのうち2本がモールからで、FW戦では最後まで苦しんだ。それでも日本は、最後の最後に同点ではなく勝ちを取りにいった。PGを選べば引き分けで勝ち点2が入る場面で、スクラムを選んだ判断は今も語り継がれている。
出場23人の「今」一覧
先発15人とリザーブ8人の名前は、World Rugbyの試合記録にもとづく。「2026年9月時点」の欄は、各チームの公式サイト、リーグワンの発表、報道などで確認できた範囲で書いた。確認できなかったものは、そう明記している。
| 番号 | 選手 | 2026年9月時点 |
|---|---|---|
| 1 | 三上正貴(PR) | 東芝ブレイブルーパス東京の選手一覧に掲載。現役 |
| 2 | 堀江翔太(HO) | 2024年5月に引退。2025年8月から埼玉WKのFWコーチ |
| 3 | 畠山健介(PR) | 2022年5月に引退。2025年12月に東京山九フェニックスのFWコーチに就任 |
| 4 | トンプソン ルーク(LO) | 2023年5月に2度目の引退。2024年1月から浦安D-Rocksの公式アンバサダー |
| 5 | 大野均(LO) | 2020年5月に引退。日本代表98キャップは今も歴代最多 |
| 6 | リーチ マイケル(FL・主将) | 東芝BL東京で現役。日本代表でもプレーを続ける |
| 7 | マイケル・ブロードハースト(FL) | 2021年8月に引退 |
| 8 | ツイ ヘンドリック(No.8) | 浦安D-Rocksで2025-26シーズンを最後に引退 |
| 9 | 田中史朗(SH) | 2023-24シーズン限りで引退 |
| 10 | 小野晃征(SO) | 2021年に引退。2024年から東京サントリーサンゴリアスのヘッドコーチ |
| 11 | 松島幸太朗(WTB) | 東京サンゴリアスで現役。2025年3月にトップリーグ・リーグワン通算100試合出場 |
| 12 | 立川理道(CTB) | クボタスピアーズの公式サイトの選手名鑑に掲載 |
| 13 | マレ・サウ(CTB) | 現在の活動は公式情報で確認できず |
| 14 | 山田章仁(WTB) | 2026-27シーズンからD3に参入するAZ-COM丸和MOMOTARO’Sへ。肩書は「営業兼選手」 |
| 15 | 五郎丸歩(FB) | 2021年に引退。2024年11月に一般社団法人を設立し代表理事 |
| 16 | 木津武士(HO) | 2023年8月に引退を表明後、2024年3月にAZ-COM丸和MOMOTARO’Sのプレーイングコーチとして復帰 |
| 17 | 稲垣啓太(PR) | 埼玉ワイルドナイツで現役 |
| 18 | 山下裕史(PR) | コベルコ神戸スティーラーズで現役。2025-26シーズンにトップリーグ・リーグワン通算200試合出場(史上初) |
| 19 | 真壁伸弥(LO) | 2019年に引退し、社業へ |
| 20 | アマナキ・レレイ・マフィ(No.8) | 2025-26シーズンはイングランドのニューカッスルでプレーし、同シーズン限りで退団(2026年5月発表)。その後の所属は確認できず |
| 21 | 日和佐篤(SH) | 神戸スティーラーズの選手一覧に掲載。現役 |
| 22 | 田村優(SO) | 横浜キヤノンイーグルスで2025-26シーズンもリーグ戦に出場 |
| 23 | カーン・ヘスケス(WTB) | 2022年に一度引退、2023年にルリーロ福岡で復帰。2025年10月に同チームを退団 |
今もスパイクを履いている男たち
一番驚いたのは神戸だ。2025-26シーズンにリーグワン初優勝を果たしたコベルコ神戸スティーラーズの選手一覧には、山下裕史と日和佐篤の名前が今も並んでいる。山下は1986年生まれのPRで、2025-26シーズンにトップリーグとリーグワンの公式戦通算200試合出場(リーグの数え方による)に史上初めて到達した。あの日リザーブから入った2人が、11年後にリーグ王者のロッカールームにいる。
田村優もまだ現役だ。横浜キヤノンイーグルスが2026年5月に発表した退団選手の一覧に名前はなく、2025-26シーズンもリーグ戦に出場している。2019年W杯では10番として日本の初のベスト8を支えた選手が、37歳のシーズンを迎える。
ブレイブルーパスの三上正貴も1988年生まれで、今季の選手一覧に名前がある。稲垣啓太は埼玉ワイルドナイツで、W杯には2015年、2019年、2023年と3大会続けて出た。松島幸太朗はフランスのクレルモンを経て2022年にサンゴリアスに戻り、2025年3月29日の静岡ブルーレヴズ戦でトップリーグ・リーグワン通算100試合出場を達成している。
そして山田章仁。1985年生まれのWTBは、2026-27シーズンからD3に新しく入るAZ-COM丸和MOMOTARO’Sに移り、「営業兼選手」としてプレーを続ける。同じチームには、2024年からブライトンの戦友、木津武士がプレーイングコーチとして加わっていた。
- ポジション
- FL(6番)
- 生年・出身
- 1988年・ニュージーランド出身
- 所属
- 東芝ブレイブルーパス東京
- 代表キャップ
- 97(2026年8月時点)
出典:World Rugby、ラグビー日本代表歴代キャップ保持者一覧
あの日の主将リーチは、今も日本代表にいる。2026年7月のネーションズチャンピオンシップのイタリア戦でも登録メンバーに入った。W杯は2011年から2023年まで4大会連続で出場していて、2027年に選ばれれば5大会目になる。詳しくはリーチ マイケルの記事で書いた。
指導者になった男たち、別の道を選んだ男たち
指導者の道に進んだのは、あの試合で最前列にいた2人と司令塔だ。堀江翔太は2024年5月のリーグワン決勝を最後に引退し、2025年8月から古巣の埼玉ワイルドナイツでFWコーチを務めている。畠山健介は2022年5月に引退し、2025年12月に東京山九フェニックスのFWコーチに就いた。10番の小野晃征は2021年に引退したあと、2023年にサンゴリアスのアシスタントコーチ、2024年からヘッドコーチになった。
ロックの2人は対照的だ。大野均は2020年5月、42歳で引退し、東芝で普及の仕事についた。日本代表98キャップは、2026年8月時点でも歴代最多のままだ。トンプソン ルークは2020年1月に一度引退したあと現役に戻り、2023年5月に2度目の引退。2024年からは浦安D-Rocksのアンバサダーを務めている。
五郎丸歩は2021年シーズンで引退し、静岡ブルーレヴズのクラブ・リレーションズ・オフィサーを経て、2024年11月に一般社団法人「Future Innovation Lab」を設立して代表理事になった。No.8のツイ ヘンドリックは、パナソニック、サンゴリアス、浦安D-Rocksと渡り歩き、2025-26シーズンを最後にスパイクを脱いだ。
Q1ブライトンの南アフリカ戦、最後の逆転トライを決めたカーン・ヘスケスは、この試合で先発だった?リザーブだった?答えを見る
リザーブ(背番号23)。途中から入り、試合時間84分に左隅へ飛び込んだ。World Rugbyは「世界に響いたトライ」としてこの場面を公式動画で紹介している。
ちなみに、あの大会の日本は中3日でスコットランド戦を迎え、10-45で敗れている。その後サモアに26-5、アメリカに28-18で勝った。4試合すべてに出た選手も多く、南アフリカ戦のメンバーは、あの大会のほぼ全員が「W杯で3勝した日本代表」の一員でもある。
エディー・ジョーンズは、また日本代表に戻ってきた
あの日のヘッドコーチ、エディー・ジョーンズは、2015年W杯のあとイングランド、オーストラリアの代表を率い、2024年から再び日本代表のヘッドコーチを務めている。ブライトンで主将を務めたリーチと、また同じチームで次のW杯を目指していることになる。
2015年の日本代表は、南アフリカに勝ったあとスコットランドに敗れ、サモアとアメリカには勝ったが3勝1敗で準々決勝に進めなかった。4年後の2019年、日本は自国開催のW杯で初めてベスト8に入る。ブライトンの勝利がなければ、その流れもなかったはずだ。
2027年W杯の日本代表の顔ぶれはメンバー予想33人で、ブライトン組を含む歴代の名選手から選んだベストメンバーは歴代最強の日本代表XVで、それぞれ書いている。現役組が今季どこで観られるかはリーグワン2026-27開幕ガイドも参考にしてほしい。
11年たって、23人の歩いている道はばらばらになった。グラウンドに立ち続ける人、選手を育てる人、ラグビーの外へ出た人。それでも、名前を並べるとあの夜の空気が戻ってくる。34-32は、日本ラグビーにとって今もいちばん大事なスコアのひとつだ。
参考:Wikipedia: 堀江翔太/Wikipedia: 五郎丸歩/コベルコ神戸スティーラーズ 選手一覧/東芝ブレイブルーパス東京 選手・スタッフ/リーグワン公式(横浜キヤノンイーグルス退団選手)/Wikipedia: ラグビー日本代表歴代キャップ保持者一覧
