高さは胸より下だった。腕も回していた。それでもペナルティの笛が鳴る。2026年11月1日から、World Rugbyの競技規則に「ヒップドロップ・タックル」が危険なタックルとして書き込まれた。それより前、10月5日からは「膝をついてから入るタックル」も取り締まりの対象になっている。危険なタックルは「高いタックル」だけではない。この記事を読み終えるころには、試合中の笛がどの条文で鳴ったのか、自分のタックルのどこが危ないのかを、自分で判断できるようになる。
- World Rugby競技規則(2026年版)第9条13は「早い・遅い・危険なタックル」を禁じ、頭部への接触、罰則ラインより上へのタックル、ヒップドロップ・タックルを危険なタックルの例に挙げている。
- ヒップドロップ・タックルは2026年9月28日にWorld Rugby理事会が承認し、2026年11月1日から第9条13に追加された。罰は少なくともペナルティキック。
- 膝を地面についてからタックルに入る「ニードロップ」は、2026年10月5日からの適用ガイドラインで、第13条3c・第9条11・第9条13によりペナルティの対象と明示された。
- タックルの罰則ラインは、エリートが肩の線、コミュニティーは腰か胸骨の下端(どちらにするかは試合主催者が選ぶ)。2026年7月1日施行の第14条1に書かれている。
- 持ち上げて落とす(第9条18)、空中の選手へのタックル(第9条17)、腕を使わない体当たり(第9条16)も、それぞれ独立した条文で禁止されている。
Contents 目次
危険なタックルとは? 第9条13の一文に全部入っている
危険なタックルとは、World Rugby競技規則第9条(不正なプレー)の「Dangerous play(危険なプレー)」に当たるタックルのこと。中心にあるのは第9条13で、2026年11月1日からの文言は次のとおり(要旨、2026年10月11日にWorld Rugby Passportで確認)。
A player must not tackle an opponent early, late, or dangerously.— World Rugby 競技規則 第9条13(2026年11月1日改正版)
そのあとに「危険なタックルには次のものが含まれるが、これに限らない」として3つの例が続く。①頭部への接触につながるタックル(またはタックルしようとする行為)、②どちらかの選手がオープンフィールドにいるときに、罰則ラインより上へタックルする行為、③ヒップドロップ・タックル。罰はペナルティ。
ポイントは「これに限らない」の一句。3つの例に当てはまらなくても、レフリーが危険と判断すれば第9条13で笛が鳴る。さらに第9条11は「他者にとって無謀、または危険なことは一切してはならない」と包括的に禁じている。危険なタックルの種類を覚えることは大事だが、条文の書き方そのものが「リストにないから安全」という考え方を認めていない。
そして第9条の冒頭にある原則は「不正なプレーをした選手は、注意、イエローカード、退場のいずれかを受けなければならない」。罰の最低ラインはペナルティでも、危険の度合いによってはカードが出る。ここが分かれ目。
カードの色はどう決まる? 頭部接触の4つの質問
カードの色は条文に書かれていない。頭部への接触については、World Rugbyが「Head Contact Process(頭部接触の判定手順)」という適用ガイドラインを出しており、判定はおおむね次の4つの質問で進む。
- 頭部への接触はあったか首やのどの周辺も頭部に含む。
- 不正なプレーだったか故意か、無謀か、避けられたか。
- 危険の度合いは直接か間接か、力が強いか弱いか。
- 軽減する事情はあるか相手の急な沈み込み、明らかに高さを下げようとした動き、など。故意や非常に無謀なプレーには軽減を適用しない。
同じガイドラインは「焦点はケガではなく、関わった選手の行為に置く」と書いている。相手が無傷でも、危険な行為ならカードは出る。
エリートラグビーでは、レッドカードの後に20分経てば交代選手を入れられる「20分レッドカード」が2026年7月1日から競技規則になっている(第9条30)。仕組みは20分レッドカードの解説で、映像判定の流れはTMOの記事で詳しく説明している。
反則になるタックルは何種類? 条文つきの一覧表
タックルにかかわる危険なプレーは、2026年10月時点の競技規則で少なくとも9つの型に分けて書かれている。罰はどれもペナルティ(キッカーへのレイトチャージだけは罰の位置を相手が選べる)。カードの有無は条文ではなく、その場の危険度で決まる。
| 型 | 条文(2026年版) | 何がダメか | 最低の罰 |
|---|---|---|---|
| ハイタックル・頭部接触 | 9.13/14.1/14.5a | 罰則ラインより上へのタックル、頭部への接触につながるタックル | ペナルティ |
| ヒップドロップ | 9.13(2026年11月1日〜) | 横・後ろからつかみ、振る・腰や体重を相手の脚に落とす | ペナルティ |
| ニードロップ | 13.3c/9.11/9.13(ガイドライン2026年10月5日〜) | 膝を地面についてからタックルに入る | ペナルティ |
| アーリー・レイト | 9.13 | ボールを持つ前、パスやキックを放した後のタックル | ペナルティ |
| キッカーへのレイトチャージ | 9.25 | キックした直後の選手に故意に当たる・遅れてタックル | ペナルティ(位置は相手が選択) |
| ノーボールタックル | 9.14 | ボールを持っていない相手へのタックル | ペナルティ |
| ノーアーム(ショルダーチャージ) | 9.16 | つかもうとせずに当たる・突き倒す | ペナルティ |
| 空中の選手へのタックル | 9.17 | 足が地面から離れている相手へのタックル、押す、引く、つかむ | ペナルティ |
| ティップ(持ち上げて落とす) | 9.18 | 持ち上げ、頭や上半身が地面に当たるように落とす・突き刺す | ペナルティ |
2026年の改正で、ヒップドロップとニードロップという「低いのに危ない」型が条文とガイドラインに加わった。高さだけ見ていると、この2つを見落とす。
反則全体の基本と笛の後の流れはラグビーのルール初心者ガイドで整理している。
ハイタックルの基準は? 肩か、胸骨の下端か、腰か
ハイタックルの基準は、2026年7月1日施行の第14条1にある「罰則ライン」。エリートラグビーは肩の線、コミュニティーラグビーは腰か胸骨の下端で、どちらを使うかは、競技規則のGame On(コミュニティー向けバリエーション)に従って試合の主催者が選ぶ。2026年6月17日のWorld Rugby理事会で文言が承認された。
第14条1は、タックラーには「該当する罰則ラインより下でタックルする責任がある」とし、同時に「ボールキャリアには安全にタックルに入る責任がある」とも書いている。ボールキャリアが急に沈み込んだ場合など、両者の動きを見て判断するという考え方だ。
日本国内はどうか。日本ラグビーフットボール協会は2023年9月1日から、リーグワンを除く全カテゴリーで「タックルの高さを胸骨より下へ」とする試験的ガイドラインを運用してきた。2026年7月15日の通達では、コミュニティーラグビーのタックルの高さ引き下げを含む競技規則改正を7月1日から適用するとしている。大会ごとにどのラインを採るかの細部は通達の附属文書と各大会の規定で確認してほしい。小学生(U-12)と中学生(U-15)は日本協会の独自規則で、胸部より上へのタックル、ノーバインドタックル、逆ヘッドのタックルが危険な行為として禁止されている。
タックルの入り方そのものはタックルのコツと2026年の高さルールで、頭の位置から順に解説している。
ヒップドロップ・タックルとは? 11月1日から何が変わったか
ヒップドロップ・タックルとは、ボールキャリアを横か後ろからつかみ、タックラーが相手を振り回す、または倒れる瞬間に自分の腰や体重を相手の脚の上に落とすタックルのこと。World Rugbyは2026年9月28日に理事会で承認し、11月1日から第9条13の「危険なタックル」の例に加えた。
条文に追加された定義を分解すると、要素は3つ。
- 横か後ろからつかむ正面からのタックルではなく、追いかける形や横から抱える形。
- 回り込む・振るタックラーが相手の体の周りを回り込むように、あるいは相手を振るようにして倒す。
- 腰・体重を脚に落とす倒れていく瞬間、タックラーの腰や体重が相手の脚や下肢の上に乗る。
定義の書き方は「つかむ」かつ「振る、および/または、体重を落とす」。正面から腰に入って押し倒すタックルは、この定義に当てはまらない。
なぜ禁止されたのか。World Rugbyは「まれな動作だが、ボールキャリアの重大なケガにつながることが多い」と説明し、タックル作業部会がアメリカンフットボールとラグビーリーグですでに禁止されている点も検討したうえで、明文化を勧告した。World Rugbyのニュースでは、ブレット・ロビンソン会長が脚の重大なケガにつながりうると述べている。
罰は少なくともペナルティキック。カードの基準とその後の懲罰については、World Rugbyが「11月1日までにマッチオフィシャルの判定と懲罰の扱いを検討する」としていた。2026年10月11日時点では、その内容は公表されていない。試合で見るときは、その後に判定や懲罰のガイドラインが出ていないかWorld Rugby Passportで確認してほしい。発表の経緯はニュース記事ヒップドロップ・ニードロップの新規定で詳しく扱っている。
ちなみに、ラックやモールの中ではもともと第9条20eで「相手に体重を落とす、下肢を狙う」ことが禁じられている。今回の改正は、その考え方をオープンプレーのタックルにも広げた形と読める。
ゴール前で膝をついて低く構えるディフェンスは反則?
Threadsでこんな質問をもらった。「ゴール前で膝をついて低く構えて待つディフェンスもダメ?」。競技規則の文言に沿って答えると、低く構えるだけなら反則ではない。膝を地面についた状態からタックルに入るのは、2026年10月5日からのガイドラインでペナルティの対象になる。
根拠は3つの条文と、ガイドライン「Dangerous tackles – October 2026」だ。
- 第13条3c:フィールド・オブ・プレー内で地面に倒れている、ボールを持たない選手は「プレーから外れて」おり、タックルしたり、タックルしようとしたりしてはならない。
- ガイドライン:タックル前に膝を地面につく選手は「オープンプレーで自ら足から離れている」ので、規則上タックルできない、と明記。タックラーの頭が相手の膝の高さまで急に下がること、地面に固定されたタックラーに当たったボールキャリアがひっくり返されることを、ケガが増えた理由に挙げている。
- 第9条11・第9条13:無謀・危険と判断されれば不正なプレーとしても扱われる。
一方で、ガイドラインは「タックルと同時に地面に触れることはある。危険でなければ不正なプレーとはしない」とも書いている。つまり線引きは「膝が先か、タックルと同時か」。両足で立ったまま腰を落として待ち、タックルの瞬間に膝が芝に触れるのは、危険でなければ問題にならない。最初から膝をついて待ち、そこから当たりにいくのが、取り締まりの対象だ。
ここから先は断定しない。第13条3は「フィールド・オブ・プレー内」の規定で、インゴール(トライラインの奥)はフィールド・オブ・プレーに含まれない(定義より)。インゴールに下がって膝をつき、そこでタックルした場合に第13条3cがそのまま当てはまるかは、条文だけでは言い切れない。ただ第9条11と第9条13は場所を限らないので、危険と判断されれば反則になりうる。迷ったら、立って構える。それが一番確実だ。
Q1ゴールライン手前で、両足で立ったまま低く構えたディフェンダーが、タックルの瞬間に片膝を芝についた。反則?答えを見る
危険でなければ反則にならない。2026年10月5日からのガイドラインは「タックルと同時に地面に触れる」ケースを不正なプレーとしないと明記している。反則になるのは、先に膝をついてからタックルに入る形だ。
持ち上げる、空中、腕なし、遅れる。昔からある危険なタックル
新しい2つ以外も、条文はそれぞれはっきりしている。レフリーがどこを見ているかを中心に整理する。
ティップタックル(持ち上げて落とす):第9条18
相手を地面から持ち上げ、頭や上半身が地面に当たるように落とす、または突き刺す行為。持ち上げること自体ではなく、「頭・上半身から落ちる」ことが条文の中心。首のケガに直結するので、試合で最も重く見られやすい型のひとつだ。日本協会のU-12・U-15の規則では、「振り回す行為」「引き倒す行為」も危険な行為として並んでいる。
空中の選手へのタックル:第9条17
足が地面から離れている相手に、タックル、チャージ、引っ張る、押す、つかむのはすべて禁止。ハイボールの捕球やラインアウトでジャンプした選手が対象になる。自分も跳んでボールを競り合うのとは別物で、条文が見ているのは「着地の自由を奪うかどうか」だ。
ノーアームタックル・ショルダーチャージ:第9条16
ボールキャリアに「つかもうとせずに」当たる、突き倒すのが反則。腕が後ろに残ったまま肩だけで当たる形が典型だ。第14条でタックルは「ボールキャリアをつかんで地面に倒すこと」と定義されている。腕で包むことがタックルの条件そのもの、と覚えておけばいい。
アーリー・レイト・ノーボール:第9条13・9条14・9条25
ボールを持つ前(アーリー)、パスやキックを放した後(レイト)、そもそもボールを持っていない相手(ノーボール)へのタックル。キッカーへのレイトチャージは第9条25で特別に扱われ、反則を受けた側はペナルティの位置を「反則の地点」か「ボールが落ちた地点」などから選べる。
危険なタックルの条文を並べてみると、共通点はひとつしかない。相手が自分で体を守れない形で倒していないか。高すぎる、持ち上げる、空中、腕なし、そして脚の上に腰を落とす。全部、相手の受け身を奪う動きだ。低く、腕で包み、足で押し切る。タックルの基本どおりに入れば、11月1日の改正でも困ることはない。
World Rugbyの競技規則では2026年11月1日から反則になった。2026年9月28日に理事会が承認し、第9条13の「危険なタックル」の例として明記された。罰は少なくともペナルティキックで、カードの基準は11月1日までに検討するとされていた。 タックルの前に片膝または両膝を地面についてから相手に入るタックルのこと。2026年10月5日からのWorld Rugbyの適用ガイドラインで、第13条3c・第9条11・第9条13によりペナルティの対象と明示された。タックルと同時に膝が地面に触れるだけなら、危険でなければ反則としない。 2026年7月1日施行の第14条1で、エリートラグビーは肩の線、コミュニティーラグビーは腰か胸骨の下端が罰則ラインとされた。コミュニティーでどちらを使うかは試合主催者が選ぶ。日本では2023年9月からリーグワンを除く全カテゴリーで「胸骨より下」の試験的ガイドラインが運用されてきた。 必ずではない。条文上の罰はペナルティで、カードを出すかどうかはレフリーが危険の度合いで判断する。頭部への接触は、World Rugbyの判定手順(接触の有無、不正なプレーか、危険の度合い、軽減事情)に沿って決まる。 競技規則に「ティップ」「スピア」という呼び名は出てこない。どちらも相手を持ち上げて落とす型を指す通称で、条文では第9条18が「相手を持ち上げ、頭や上半身が地面に当たるように落とす、または突き刺す」行為を禁じており、罰はペナルティ。危険度が高く、カードの対象になりやすい。ラグビーのヒップドロップ・タックルはいつから反則?
ニードロップ・タックルとは何?反則になる?
ハイタックルはどこから上が反則?
危険なタックルをしたら必ずイエローカード?
ティップタックルとスピアタックルは同じ?
参考:World Rugby 競技規則 第9条 不正なプレー(確認日2026-10-11)/World Rugby Passport:2026-11 Law change – Hip drop tackles(確認日2026-10-11)/World Rugby Passport:Dangerous tackles – October 2026(確認日2026-10-11)/World Rugby:World Rugby clarifies law on dangerous tackles(確認日2026-10-11)/World Rugby Passport:Community tackle height law wordings approved(確認日2026-10-11)/日本ラグビーフットボール協会:競技規則改正に関する通達(2026年7月15日、確認日2026-10-11)
