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ラグビーのケガを減らすウォームアップ「Activate」とはWorld Rugby公式プログラムの中身と続け方

World Rugbyが無料公開するケガ予防ウォームアップ「Activate」。ユース約20分・成人約25分のA〜D構成、週何回・何週で進むか、試合前に外す種目、英国3研究の条件と数字、首の種目の注意点までコーチ目線で整理した。

Text — LEO Updated — Read — 14分
ラグビーのケガを減らすウォームアップ「Activate」とは|World Rugby公式プログラムの中身と続け方
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練習前のウォームアップ、なんとなくジョグとストレッチで済ませていないだろうか。World Rugbyは2019年、ユース約20分・成人約25分のウォームアップを、そのままケガ予防のトレーニングに置き換えるプログラムを無料で公開した。名前は「Activate(アクティベート)」。英国の高校生と成人クラブを対象にした研究では、続けたチームほど試合中のケガや脳震盪が少なかった。読み終えるころには、どの版を選び、週何回・何週で進め、試合前に何を外すかを自分のチームに当てはめて決められるはずだ。

Pointこの記事の要点

  • ActivateはWorld Rugbyが2019年9月9日に公開した無料のケガ予防ウォームアップで、U15・U16・U18・成人の4版があり、World Rugby Passportで日本語でも見られる。
  • 1回はパートA〜Dの4部構成で、World Rugby Passportの日本語Q&Aではユース版が約20分、成人版が約25分。1つのレベルを約6〜8週続けてから次へ進むのが目安。
  • 英国の学校生を対象にしたランダム化比較試験(Hislopら、2017年)では、週3回以上実施したチームに絞ると、試合中のケガの発生率は比較群より72%、脳震盪は59%低かった。
  • 比較群も「動的ストレッチやアジリティを含む一般的なウォームアップ」を行っており、Activateの効果は「何もしない」との比較ではない。
  • 試合前のウォームアップではノルディック・ハムストリングカールを外す。首のエクササイズはパートナーが「軽い抵抗」をかける種目で、痛みや首のケガ歴がある選手は医師やトレーナーの判断が先になる。

Contents 目次
  1. Activateとは? ウォームアップの時間を使う、無料のケガ予防プログラム
  2. 1回の中身は? A〜Dの4パートで、ユース約20分・成人約25分
  3. 年代別の4版:どれを使えばいい?
  4. コーチが覚える「Key Activate 8」
  5. 週何回・何週で次のレベルへ? 目安は「週1〜2回以上、6〜8週」
  6. 試合前と練習前は何が違う?
  7. 研究は何を示した? 3本の論文を条件ごとに読む
  8. ① スクールラグビー(Hislopら、2017年):差が出たのは週3回以上
  9. ② 成人のクラブラグビー(Attwoodら):脳震盪は約60%少なく、肩は逆に多かった
  10. ③ 現場で使ったら?(Bardenら、2022年):週3回を形どおり続けたのは1チームだけ
  11. 数字を読むときの注意
  12. よくある誤解は? 「ストレッチで十分」「やればケガしない」はどちらも違う
  13. 誤解1:ジョグとストレッチで十分
  14. 誤解2:やればケガをしなくなる
  15. 誤解3:首の種目は強く押すほど効く
  16. 誤解4:決まった形でしかやってはいけない
  17. チームで導入するには? コーチ向けの5ステップ
  18. よくある質問

Activateとは? ウォームアップの時間を使う、無料のケガ予防プログラム

Activateは、英国のバース大学とイングランドのラグビー協会(RFU)の研究者たちが共同で開発し、World Rugbyが2019年9月9日に正式に公開したケガ予防のエクササイズ・プログラムだ。公開時点で11言語に対応していた。2026年10月時点で、World Rugbyの教育サイト「World Rugby Passport」に日本語ページがある。

特徴は、新しい練習時間をつくらないこと。マニュアルには「トレーニングの最初と途中、そして試合前のウォームアップの一部として使える」と書かれている。いつものアップの時間をActivateに置き換える発想だ。

道具もほとんど要らない。Passportの日本語Q&Aでは、エリアを示すコーンをいくつか用意するだけでセットアップでき、人数次第では20m×20mの正方形1つでもプログラム全体を実施できるとしている。天然芝でも人工芝でもよく、滑りにくい体育館の床でも可。30秒間のように時間で区切る種目は、コーチ以外の誰か(アシスタントや見学の選手)にタイムキーパーを任せ、コーチは選手の動きを見ることに集中する。地味だが効く工夫だ。

マーカーコーン

Activateはマーカーコーンがあれば始められる。区画をいくつも作るなら枚数の多いセットを選び、芝の上で見やすい色か、まとめて持ち運べる収納袋付きかを確認する。

World Rugbyの公式ページとマニュアルが掲げる数字は、次の2つ。

26〜40%軟部組織(筋肉・靭帯など)のケガのリスク減少(World Rugby公表。ユースの研究で26%、成人の研究で40%)
29〜60%脳震盪のリスク減少(同上。ユースの研究で29%、成人の研究で60%)

2つの数字は、ユースと成人の別々の研究の結果を並べたものだ。どんな人たちを対象に、どのくらいの頻度でやって、この数字が出たのか。そこは後半で1本ずつ見ていく。

1回の中身は? A〜Dの4パートで、ユース約20分・成人約25分

どの版も、1回分はパートA〜Dの4つで組み立てられている。ランニングで体を温めてから、バランス、筋力、着地と方向転換へ。Passportの日本語Q&A(コーチのためのQ&A情報)に載っている構成を、ユース版と成人版で並べるとこうなる。

パート ユース版(U15〜U18)の中身 時間 種目数 成人版の中身 時間 種目数
A ランニングの準備運動と方向転換 2分 3 ランニングの準備運動と方向転換 2分 2
B 下半身のバランス(止まった状態・動きの中) 4分 2 可動性、レジスタンス、静的バランス 9分 6
C 部位別のレジスタンス(全身の筋力・安定性・可動性) 8分 5 レジスタンス、動的バランス、方向転換、プライオメトリクス 9分 6
D 着地、方向転換、プライオメトリクス 6分 2 首のレジスタンス、スプリント・コンディショニング 5分 2
合計 20分 12 25分 16

英語のマニュアルPDFでは、所要時間は「ユース15〜20分、成人20〜25分(選手とコーチが種目に慣れたあと)」と幅を持たせて書かれている。マニュアル内の成人版の時間配分はPassportの表と少し違うので、最新の中身はPassportで確認するのが確実だ。種目は、片脚でのバランス、パートナーの抵抗に逆らう肩の種目、ノルディック・ハムストリングカール(膝立ちで足首を押さえてもらい、上体をゆっくり前に倒していく、もも裏の種目)、首の種目など。プライオメトリクスは「跳ぶ・弾む」動きのことだ。

年代別の4版:どれを使えばいい?

答えはシンプルで、選手の年齢で決める。マニュアルは13〜15歳はU15、15〜16歳はU16、16〜18歳はU18、それより上は成人版と指定している。年齢が重なる境目は、チームの学年構成で寄せればいい。

版 対象年齢 レベルの数 試合日専用メニュー
U15 13〜15歳 4 なし(レベル1〜4を試合前にも使う)
U16 15〜16歳 4 なし(同上)
U18 16〜18歳 4 なし(同上)
成人 18歳以上 7 あり(「試合日」のA〜D)

マニュアルでは段階を「Phase」、Passportでは「Level(日本語版はレベル)」と呼んでいるが、中身は同じものだ。上の年代の版ほど種目が少しずつ難しくなる設計で、シーズンが終わって選手が次の年代に上がったら、その年代の版に移る。

13歳未満の版はない。女子チームについて、マニュアルは「研究は14〜18歳の男子と成人男子で行われた。下の年代や女子にも役立つと考えられるが、すべての種目が適しているとは限らない」とし、コーチの判断で調整するよう求めている。小学生にそのまま当てはめる前提のプログラムではない、と押さえておきたい。

コーチが覚える「Key Activate 8」

種目ごとの細かいポイントとは別に、どの種目にも共通する8つの声かけが決められている。

  • 頭はニュートラル(「サングラスの上から見るように」)
  • 胸を張る/肩甲骨を寄せる/肩と腰の高さをそろえる
  • 体幹に力を入れる
  • 膝をやわらかく/股関節・膝・足首を一直線に/膝はつま先の上

1つの種目につき、この中から2〜3個を使うのが基本だ。タックルに入る姿勢づくりとも重なる部分が多い。低く入るときの頭と背中の形はタックルのコツの記事で掘り下げる。

週何回・何週で次のレベルへ? 目安は「週1〜2回以上、6〜8週」

最大の効果を狙うなら週3回、レベルは約6〜8週ごとに上げる。これが公式資料の答えだ。ただし、週1〜2回でもケガの減少は見られた、とマニュアル自身が書いている。細かい運用はこう整理できる。

  1. 年代に合った版のレベル1から始めるシーズン途中から始める場合も、最初のレベルから入る。
  2. 1つのレベルを約6〜8週英語のマニュアルは「週2回なら1レベルあたり12〜16回」と書く。Passportの日本語Q&Aによると、この6〜8週は「ある程度コンディショニングの経験があり、週1〜2回実施するチーム」を前提にした目安。初心者が多いチームは8週を超えて同じレベルを続けてかまわない。
  3. 進む基準は「週数」ではなく「動きの質」コントロール、バランス、正しいテクニックでこなせるか。チームの大半ができるようになったら次へ。早く上げすぎて種目がこなせなければ、前のレベルに戻す。
  4. 理想は週3回効果が大きかったのは実施回数の多いチーム。現実には練習日が週2回のチームも多いので、「できる範囲でできるだけ多く」がマニュアルのスタンスだ。
  5. 時間がない日は優先順位で削るマニュアルでは、ユース版はC→D→B→A、成人版はB→C→D→Aの順で優先する。ただし削るのは「最後の手段」とされている。

ケガから戻った選手の扱いにも触れている。チームが次のレベルに進んでいても、ケガをしたときのレベルから再開し、痛みなくこなせるようになってから進む。復帰の判断そのものは、医師やメディカルスタッフと相談するのが前提だ。

試合前と練習前は何が違う?

違いは2つだけ。試合前はノルディック・ハムストリングカールを外すこと、そして成人版には試合日専用のメニューがあることだ。マニュアルは、試合日にはActivateを「チームで行うウォームアップの最初のメニュー」にするのが理想としている。

練習前・練習中 試合前
ユース版(U15〜U18) レベル1〜4を順に 今のレベルをそのまま使える。ノルディック系は外す
成人版 レベル1〜7を順に シーズンを通して「試合日」メニューを使う
位置づけ 練習の最初、または一部を練習の途中に分散 チームのウォームアップの最初

試合前のアップ全体で見ると、Activateは「最初のブロック」になる。たとえば、Activate(成人は試合日メニュー、ユースは今のレベル。ノルディック系は外す)→ボールを使ったパスやハンドリング→FW・BKに分かれたユニット練習(ラインアウト、スクラム、サインの確認)→タックルバッグなどでのコンタクトの確認→短いダッシュで心拍を上げて終える、という流れが組みやすい。Activateのあとの中身と強度はチームの判断だが、Activateの時間を削って試合直前に詰め込むのは、ここまでの話と逆向きだ。

Q1Activateを「試合前のウォームアップ」でやるとき、外すべきとされている種目は?答えを見る

ノルディック・ハムストリングカールのバリエーション。マニュアルでは、もも裏の筋肉を疲れさせる可能性があるため、試合前のウォームアップでは行わないとしている。それ以外の種目は、ユース版なら今のレベルをそのまま試合前にも使える。

研究は何を示した? 3本の論文を条件ごとに読む

「〇%減る」という数字は強い。でも、どんな条件で出た数字なのかを知らないと、チームに持ち帰ったときに期待がずれる。Activateの効果を調べた主な研究は3本。いずれもイングランドのもので、査読誌『British Journal of Sports Medicine(BJSM)』に掲載された。まず一覧にする。

研究 対象 期間・実施の設計 全員で比べた結果 よく続けたチームに絞った結果
Hislopら(2017年、ランダム化比較試験) 私立校40校・118チーム・14〜18歳の男子3,188人 2015年8〜12月。練習と試合前アップの最初の20分 試合中のケガ全体は明確な差なし(発生率比0.85)。脳震盪0.71 週3回以上のチーム:ケガ全体0.28(72%低い)、脳震盪0.41(59%低い)
Attwoodら(2017年オンライン公開、ランダム化比較試験) 成人男子のコミュニティクラブ(RFUレベル3〜9)。81クラブを割り付け、完全なデータは41クラブ 2015/16シーズン。6週×7段階。練習で週2回+試合前に週1回 狙ったケガ(下肢・肩・頭頸部)約40%、下肢約40%、脳震盪約60%少ない 実施率が中央値以上のクラブ同士:狙ったケガ約60%少ない
Bardenら(2022年、準実験デザイン) イングランドのスクールラグビー(公開後、学校が自分たちで導入) シーズン中の導入状況と実施回数を記録 採用チームの選手:練習中のケガ59%低い、試合中23%低い(幅が大きく明確な差とは言えない) 週3回以上 vs 週1回未満:練習中67%、試合中32%低い

① スクールラグビー(Hislopら、2017年):差が出たのは週3回以上

イングランドの私立校40校を、Activateの元になったプログラムを行うグループと、比較用のウォームアップを行うグループに分けた研究だ。どちらも学校のコーチが、練習と試合前のアップの最初の20分ほどで実施した。記録したのは、試合で起きた「24時間を超えてプレーできなくなったケガ」。

全チームをそのまま比べると、ケガ全体の発生率にははっきりした差が出なかった(発生率比0.85)。脳震盪は0.71(約29%少ない計算)で、論文は明確な減少と報告しているが、90%信頼区間は0.48〜1.05と1をまたいでいる。

差が大きくなったのは、平均して週3回以上実施したチームだけを比べたときだ。

72%週3回以上実施したチームでの、試合中のケガ全体の発生率の低さ(発生率比0.28、Hislopら 2017)

論文の結論も「最大の効果を得るには少なくとも週3回」。ただ、この比較に入ったのは7校・12チームと、全体のごく一部だった点は知っておきたい。

② 成人のクラブラグビー(Attwoodら):脳震盪は約60%少なく、肩は逆に多かった

対象はイングランドのRFUリーグのレベル3〜9でプレーする成人男子のコミュニティクラブ(論文の区分ではセミプロ・アマチュア・レクリエーションの各層)。81クラブを2つに分け、完全なデータを返したのは41クラブ(介入22、比較19)。記録したのは試合で起きた「8日以上プレーできなくなったケガ」。

ケガ全体では、はっきりした差は出なかった。狙いを定めたケガ(下肢・肩・頭頸部)に絞ると約40%少ない推定で、なかでも脳震盪は1,000選手試合時間あたり1.2件対3.4件、約60%少なかった。論文は、全段階に入れていた等尺性(動かさずに力を入れる)の首のエクササイズが関係している可能性を挙げている。週1回以上実施したクラブ同士でも、狙ったケガは約40%少なかった。

そして、あまり語られない結果がある。肩のケガは介入グループのほうが多かった(1,000選手試合時間あたり1.7件対1.0件)。肩の脱臼は少なかった(1件対5件)一方で、筋肉・腱のケガが多かった。著者たちは「明確な説明はない」としたうえで、肩のケガはすべてコンタクトで起きていたことから、タックル指導をActivateと並行して行うことを勧めている。ウォームアップだけでは防ぎにくいケガがある、ということだ。

③ 現場で使ったら?(Bardenら、2022年):週3回を形どおり続けたのは1チームだけ

①②は研究チームが関わった試験。③は、公開後のActivateを学校のチームが自分たちで使ったときどうなるかを見た研究だ。採用チームの選手は練習中のケガの発生率が59%低く、週3回以上の選手は週1回未満の選手より、練習中のケガが67%、試合中のケガが32%低かった。

見逃せないのは次の一文。採用したのは全体の65%のチームだったが、レベルを正しく進めながら週3回実施できたのは、たった1チームだけだった。

“only one team used Activate three times per week, using whole phases and programme progressions.”— Barden et al., British Journal of Sports Medicine, 2022

効果の数字より、こちらのほうが現場にとってはリアルかもしれない。中身よりも、続けることのほうが難しい。

数字を読むときの注意

3本とも英国の研究で、対象は男子。日本の中高生や女子チームで同じ結果になるかは、この3本からは分からない。数字は「チーム単位で見た発生率の差」で、個々の選手が絶対にケガをしなくなるわけではない。①②は90%信頼区間で判定しており、幅の広い結果も含まれる。痛みがある、脳震盪の疑いがある。そういうときは、プログラムを続けるかどうかより先に、医師の判断を仰いでほしい。

よくある誤解は? 「ストレッチで十分」「やればケガしない」はどちらも違う

誤解1:ジョグとストレッチで十分

研究の比較群は「何もしない」チームではなかった。Hislopらの比較群は、ランニング、動的ストレッチ、組み合い、可動性、スピードや方向転換のドリルという「学校ラグビーで最善とされる一般的なアップ」。Attwoodらの比較群も、動的ストレッチや腕立て、プランク、スプリントドリルを含むアップだった。まともなアップをしているチームと比べても差が出たのが、Activateの研究のポイントだ。

止まったまま伸ばすストレッチ(静的ストレッチ)について、日本スポーツ振興センター(JSC)のアスリート育成パスウェイのコラムは、パワー、スプリント、ジャンプといった瞬発的な運動能力を下げることがあり、動きながらの動的ストレッチは瞬発的な運動能力を高めると説明している。練習前に止まって伸ばすだけで終わるアップは、ラグビーの準備としては物足りない。

誤解2:やればケガをしなくなる

ならない。成人の研究では肩のケガがむしろ多く、ケガ全体では明確な差が出なかった研究もある。ラグビーのケガの多くはコンタクトで起きる。タックルの技術、体づくり、ルールの理解と組み合わせて初めて意味を持つ、と考えたほうがいい。体づくりの全体像はラグビーの筋トレの記事で解説する。

誤解3:首の種目は強く押すほど効く

違う。マニュアルの「首の抵抗運動」は、1人があごを引く・上を見る・耳を肩に近づける・振り向く方向に頭を動かそうとし、パートナーが「軽い抵抗」をかける種目だ(静止したまま力を入れる「首の静的収縮」もある)。パートナー同士で勢いをつけたり、ふざけて強く押したりするのは論外。首や肩に痛みやしびれがある、首のケガや脳震盪から復帰したばかり、という選手は、Activateの首の種目を含めて医師やトレーナーに確認してから行う。首の鍛え方そのものは首のトレーニングの記事で掘り下げる。

誤解4:決まった形でしかやってはいけない

マニュアルは、変更が効果に影響しないかは「まだ調べられていない」としつつ、動きの質が落ちず、安全であれば構成を変えてよいとしている。例として挙がっているのは、練習の途中に分けて入れる方法。ボールを使うのも、目的どおりに動けているかをコーチが見られるならかまわない、とPassportは書く。ただ、研究のチームは基本的にアップとしてまとめて行っていた。まずは形どおり、が順番だろう。

チームで導入するには? コーチ向けの5ステップ

ここまでの公式資料を、そのままチームの段取りに落とすとこうなる。ポイントは「別枠で足さない」「記録する」の2つだ。

  1. 版とレベルを決めて資料をそろえる年齢で版を選び、Passportの日本語ページでレベル1のA〜Dを確認。年代別のキューカード(種目と声かけをまとめた紙)や日本語版マニュアルPDFも用意されている。
  2. コーチが先に予習するマニュアルは、新しいレベルに入る前に動画やマニュアルで種目を確認しておくよう勧めている。新しいレベルの初回は、説明とデモのために普段より長めに時間を取る。
  3. 選手1人に実演させて全員で見る見本を見せながら声かけのポイントを話し、ペアや小グループで試させる。上の年代や大人なら、ペアで互いに声をかけ合う形も勧められている。
  4. いつものアップをActivateに置き換える別枠で足すと続かない。日付、レベル、何回目かを記録しておけば、6〜8週の区切りを見失わない。毎回コーチが仕切らなくても回るよう、選手の中に進行役を置くのも手だ。
  5. 6〜8週で「質」を見て進むか判断する大半の選手がきれいにこなせていれば次へ。できない選手は回数を減らして質を優先し、それでも難しければ前のレベルに戻す。

Barden らの研究で、週3回をレベルの進行どおりに守れたのが1チームだけだったのは、コーチや選手がサボったからではないと思う。練習時間は限られていて、アップを20分使えばその分ボールを触る時間が減る。だから「足す」のではなく「置き換える」。週3回が無理なら、まず週2回を途切れさせないところから始めればいい。

日本語の資料について補足すると、表記は「Activate 傷害予防エクセサイズプログラム」。日本ラグビーフットボール協会(JRFU)の「JRFUコーチネット」でも、2020年7月、コロナ禍の練習再開に向けたリコンディショニングの資料とあわせて日本語資料が紹介された。最新の中身を確かめるなら、一次情報のWorld Rugby Passportを見るのが確実だ。公開時のWorld Rugby公式動画も貼っておく。雰囲気をつかむにはちょうどいい長さだ。

World Rugby launches Activate programme(World Rugby公式) YouTubeで見る

ラグビーはコンタクトのあるスポーツで、ケガをゼロにはできない。だからこそ、減らせる部分は減らしたい。Activateは、その「減らせる部分」に研究で向き合ってきたプログラムで、効果が見えたのは続けたチームだった。FWもBKも、ポジションに関係なく全員でやるメニューなので、ポジションと役割を覚えたばかりの初心者でも入りやすい。グラウンドに一番乗りした誰かがコーンを並べ始める。そんな習慣になれば、それだけで強いチームだと思う。

よくある質問

Activateは1回何分かかりますか?

World Rugby Passportの日本語Q&Aでは、ユース版(U15・U16・U18)が約20分、成人版が約25分です。英語のマニュアルでは、種目に慣れたあとでユース15〜20分、成人20〜25分とされています。新しいレベルの初回は説明とデモのため、普段より長めに時間を取るよう勧められています。

週1回しかできなくても意味はありますか?

マニュアルは、週1〜2回のチームでもケガの減少は見られたと説明しています。成人クラブの研究(Attwoodら)でも、週1回以上実施したクラブ同士の比較で、狙ったケガが約40%少ない結果でした。ただし最も差が大きかったのは週3回以上のチームで、できる範囲で回数を増やすのが公式資料の考え方です。

小学生や女子チームでも使えますか?

Activateの対象はU15(13〜15歳)から成人までで、13歳未満の版はありません。研究は14〜18歳の男子と成人男子で行われており、マニュアルは下の年代や女子にも役立つ可能性があるとしつつ、すべての種目が適しているとは限らないため、コーチの判断で調整するよう求めています。

試合前のウォームアップもActivateでいいですか?

使えます。ユース版は今のレベルをそのまま試合前に使え、成人版には試合日専用のメニューがあります。ただしノルディック・ハムストリングカールは、もも裏を疲れさせる可能性があるため試合前には行いません。

Activateの首のエクササイズは安全ですか?

マニュアルでは、パートナーが「軽い抵抗」をかける種目や、動かさずに力を入れる種目として設計されています。強く押したり勢いをつけたりはしません。首や肩に痛み・しびれがある選手や、首のケガ・脳震盪から復帰したばかりの選手は、行う前に医師やトレーナーに確認してください。

参考:World Rugby Passport「Activate」/World Rugby Passport「コーチがActivateを活用する際に注意すべき重要ポイントは何ですか?」(日本語)/World Rugby Passport「コーチは、プログラムの次のレベルに進むタイミングをどのように見極めればよいでしょうか?」(日本語)/Activate Manual(World Rugby、PDF)/Activateトレーニングプログラムマニュアル(日本語版PDF)/World Rugby公式ニュース(2019年9月9日)/Hislop et al., BJSM 2017/Hislop et al., BJSM 2017(全文、PMC)/Attwood et al., BJSM(2017年オンライン公開、PDF)/Barden et al., BJSM 2022/JRFUコーチネット(2020年7月16日)/JSC アスリート育成パスウェイ「自分に合ったウォーミングアップを見つけよう」(いずれも2026年10月2日確認)

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LEOEditor-in-Chief

埼玉工業大学深谷高等学校(埼工大深谷。現・正智深谷)ラグビー部出身。WTB→CTB→FLと渡り歩き、在籍中のチームは花園2年連続ベスト4。いまはラグビージャージのデザイン制作(HERCULEGEAR)に携わりながら、ラグビーの面白さを書いています。

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