宮崎工業高校から九州共立大学。関東や関西のラグビー強豪大学の出身ではない。それでも、2026年9月19日のパシフィックネーションズカップ決勝で日本代表の3番を背負い、スクラムの右側を支えたのはこの男だった。竹内柊平、28歳。通称「TK」。フランス挑戦を模索した末に東京サントリーサンゴリアスへ移り、いまや代表のタイトヘッドプロップとして先発を重ねている。地方から這い上がった3番は、なぜ日本のスクラムに欠かせなくなったのか。
- 竹内柊平は1997年生まれ、宮崎県出身。宮崎工業高、九州共立大から2020年にNTTコミュニケーションズシャイニングアークスへ入り、浦安D-Rocksを経て2025年7月にサンゴリアスへ移籍した
- 初キャップは2022年6月18日のウルグアイ戦。JRFUの発表をもとに数えると、2026年9月19日のPNC決勝で31キャップ目
- タイトヘッド(右プロップ、3番)は、スクラムで相手と味方の両側から圧力を受ける“一番きつい”位置。そこで踏ん張りながら、フィールドでは突進とタックルで働ける
- 2026年のテストマッチでは3番の先発に定着。為房慶次朗らとの競争は続くが、W杯2027へ向けた最右翼の一人だ
Contents 目次
宮崎で始めた、小学5年のラグビー
JRFUの選手プロフィールによれば、竹内の競技歴は宮崎ラグビースクールから始まる。始めたのは小学5年。そこから宮崎工業高校、九州共立大学へ進んだ。出生地は宮崎県だ。
日本語版Wikipediaとその出典によれば、九州共立大学では4年時の2019年に主将を務め、同大学はこの年に初めて全国大学選手権へ出場している。いわゆる“エリート街道”とは違う道のりで、社会人の扉を開いた。
- ポジション
- PR(3番・タイトヘッド)
- 生年・出身
- 1997年・宮崎県出身
- 所属
- 東京サントリーサンゴリアス
- 代表キャップ
- 31(2026年9月19日のPNC決勝終了時点。JRFU発表の30キャップ+決勝先発)
出典:日本ラグビーフットボール協会(JRFU)選手プロフィール・試合登録メンバー発表
JRFUのプロフィールでは身長183cm、体重115kg(2026年9月のPNC登録メンバー発表では120kg)。プロップとしては背が高いほうで、この“高さ”はスクラムで低く組むうえでは不利にもなりうる。それをどう克服しているかは、後で触れる。
D-Rocksで2部も経験、そしてフランスへの夢
2020年、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスに加入。日本語版Wikipediaによれば、リーグワン初出場は2022年1月8日のコベルコ神戸スティーラーズ戦だった。同じ2022年の7月、NTTグループのチーム再編で新チーム・浦安D-Rocksの一員になる。
ラグビーリパブリックは、竹内がD-Rocksで2部(ディビジョン2)も経験したと書いている。代表に呼ばれる選手が2部でプレーするのは珍しいことではないが、スポットライトが当たりにくい時期だったのは間違いない。
初キャップは2022年、ウルグアイ戦
日本代表デビューは2022年6月18日、秩父宮でのウルグアイ戦(リポビタンDチャレンジカップ2022)。途中出場で、日本は34-15で勝った。JRFUの試合記録でも、この試合のメンバーに竹内の名前が確認できる。
転機は2025年だ。D-Rocksを退団し、かねて希望していたフランスでの挑戦を探った。7月のウェールズ代表との2連戦では、7月5日の試合にPRながらフル出場(ラグビーリパブリック)。ある強豪から好感触を得たが、正式な契約には至らなかった。
そして2025年7月29日、サンゴリアス入りを発表する。このとき日本代表15キャップ。移籍を決めた理由を、竹内はこう語っている。
自分にコミットするのではなく、チームにコミットしたい。— 竹内柊平(ラグビーリパブリック、2025年8月10日)
同じ記事では、エディー・ジョーンズHCから「自分の仕事だけをしてくれ」と助言され、その言葉が心に沁みたことも明かしている。突っ走りがちな性格を自覚したうえで、チームの一部として働く。サンゴリアスでの1年目は、その切り替えのシーズンでもあった。チームは2025-26シーズンのリーグワンD1を4位で終えている。
3番は“両側から押される”
ここからは、タイトヘッドプロップという仕事の中身を元ラガーマン目線で書く。プロップの基本はプロップ(PR)の特徴と伝説のプロップで詳しく書いたが、要点をおさらいしておく。
スクラム最前列の右端に入る3番は、頭が相手の1番とフッカーのあいだに入る。つまり相手の2人に挟まれ、背中からは味方のロックに押される。両肩に相手の圧力がかかるので、左端の1番(ルースヘッド)より体の自由がきかない。スクラムの“土台”と呼ばれるのはそのためだ。
- 低さを保つ背が高いプロップは、腰と膝を深く曲げて相手より先に低い姿勢を作らないと、下から持ち上げられる。竹内のように183cmあるなら、なおさら準備の姿勢がものを言う。
- バインドで相手の腕を殺す3番は右腕で相手1番の背中側をつかみ、相手が内側へ角度をつけてくるのを抑える。ここで負けるとスクラムが回され、反則を取られる。
- 首と背中を一直線に押す力は脚から生まれ、背中を通って肩に伝わる。首が折れたり背中が丸まったりすると力が逃げるうえ、ケガにつながる。安全の面でも一番大事なポイントだ。
組み方の基本と首を守る姿勢はスクラムの組み方にまとめた。スクラムは危険を伴うプレーなので、実際に組む練習は必ず指導者の管理のもとでやってほしい。
183cmのタイトヘッドが低く組むには
冒頭で触れた“高さ”の話に戻る。背の高いプロップは脚が長いぶん、低い姿勢を作るには膝と股関節を深く曲げる必要がある。そのぶん太ももとお尻の筋力、そして足首の柔らかさが求められる。逆に言えば、低さを作れさえすれば、長い脚は押し込むときのストロークの長さになる。
JRFUは、竹内自身がスクラム前のルーティンを解説する動画を公開している(下に埋め込んだ)。細かい中身は動画で確かめてほしいが、決まったルーティンを持っていること自体が、組む前の準備を大事にしている証拠だ。スクラムは「組んでから」ではなく「組む前」に勝負が決まる。現場でよく言われる話だ。
所属のサンゴリアスでも競争は厳しい。移籍時のラグビーリパブリックの記事では、元日本代表の垣永真之介、出番を増やしていた中野幹、日本代表にも呼ばれていた木原三四郎と、プロップの競争相手の名前が並んでいた。竹内は木原について「決まったことを愚直にやり続け」られる選手だと評している。後輩をリスペクトしながら、ポジションを争う。そういう環境を自分で選んだわけだ。
スクラムだけじゃない、フィールドの運動量
竹内の評価を押し上げているのは、スクラム以外の働きだ。ラグビーリパブリックは、竹内を「突進力とタックルに長ける右PR」と紹介している。
JRFUの公式チャンネルには、2025年のウェールズ戦でピック&ゴー(ラックからボールを拾ってそのまま前進するプレー)でトライを奪った場面や、PNC2025で江良颯にオフロードパス(タックルを受けながらつなぐパス)を通したトライの場面も残っている。プロップがオフロードを出す。それだけで相手のディフェンスは1枚ずれる。
2026年、3番の先発はTK
2026年のキャップ数の推移を見ると、竹内がどれだけ使われているかがわかる。ラグビーリパブリックのメンバー一覧では、7月1日時点で24キャップ。JRFUの一覧で8月6日時点26、カナダ戦の登録時点28、PNC決勝の登録時点30。決勝にも先発したので、31キャップになった。
| 日付 | 相手 | スコア | 竹内(JRFU試合記録) |
|---|---|---|---|
| 8月8日 | オーストラリア(花園) | 32-35 ● | 3番先発、後半26分に交代 |
| 8月15日 | オーストラリア(タウンズビル) | 17-56 ● | 3番先発 |
| 9月5日 | カナダ(新潟) | 57-12 ○ | 3番先発、後半8分に交代 |
| 9月12日 | アメリカ(PNC準決勝) | 63-14 ○ | 3番先発、後半6分に交代 |
| 9月19日 | フィジー(PNC決勝) | 20-15 ○ | 3番先発、後半31分に交代 |
プロップは交代前提のポジションで、先発が60分前後で退くのは普通のことだ。大事なのは「最初の50〜60分を任されている」こと。8月以降の5試合すべてで先発した事実が、首脳陣の評価を物語っている。
3番の先発は竹内、後半の勝負どころはクボタの為房慶次朗(JRFUの一覧で8月6日時点23キャップ)。8月8日のオーストラリア戦では、実際に竹内から為房への交代があった。W杯のメンバーでは、この2人をどう並べるかが焦点になる。あなたは「最初の50分」と「最後の30分」、どちらの3番が重要だと思うか。
Q1竹内柊平が日本代表の初キャップを得た試合の相手はどこ?答えを見る
答えはウルグアイ。2022年6月18日、秩父宮でのリポビタンDチャレンジカップ2022に途中出場し、日本は34-15で勝った。当時の所属はNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安だった。
日本代表のフロントローでは、フッカーの争いも熱い。若手の佐藤健次については佐藤健次の記事で書いた。W杯に向けたFWの顔ぶれは日本代表メンバー予想33人でも予想している。
地方の高校、九州の大学、2部のチーム、実らなかった海外移籍。竹内のキャリアには、回り道がいくつもある。それでもPNC決勝の3番に立っていたのは、その回り道のなかで、スクラムの右側を支える技術と、チームに身を預ける覚悟を身につけてきたからだろう。2025年のPNCを前に、同大会の右PRで最高峰を目指すと話していた男は、1年後、その言葉にかなり近い場所にいる。
参考:JRFU 選手プロフィール 竹内柊平/JRFU PNC2026決勝 試合登録メンバー/ラグビーリパブリック(2025年8月10日)/ラグビーリパブリック(2025年7月29日)/JRFU 2022年ウルグアイ戦 試合記録/JRFU 2026年8月8日オーストラリア戦 試合記録
