通算成績だけを見ると、日本はサモアに負け越しています。それでも、W杯では2015年から3大会続けて勝っている。1990年代から2000年代にかけて、日本代表はサモアに何度も跳ね返されてきました。その力関係がひっくり返ったのは、ここ10年ほどの話です。W杯2027の初戦、2027年10月3日のニューカッスル。相手は、最後の1枠を拾って本大会に来たサモアです。
- テストマッチ通算は19戦7勝12敗(英語版Wikipediaの日本代表テストマッチ一覧をもとに集計)。ただし2014年以降は6戦5勝
- W杯では2015年26-5、2019年38-19、2023年28-22と3連勝中
- サモアは2025年、予選で苦しみ、11月のドバイでの最終予選で最後の出場枠を獲得。2026年9月21日時点の世界ランキングは20位
- 初戦の鍵は、フィジカルの衝突で規律を保つこと。2023年はサモアの反則とカードが日本を助けた
Contents 目次
通算成績:負け越しの中身
日本とサモアのテストマッチを、英語版Wikipediaの「日本代表テストマッチ一覧」から拾い出しました。協会の公式記録と数え方が異なる可能性がある点は、あらかじめお断りしておきます。
| 日付 | 会場(都市) | スコア(日本-サモア) | 結果 |
|---|---|---|---|
| 1990年4月15日 | 秩父宮(東京) | 11-37 | 負け |
| 1999年5月22日 | 花園(大阪) | 37-34 | 勝ち |
| 1999年10月3日 | レースコース・グラウンド(ウェールズ・レクサム) | 9-43 | 負け(W杯) |
| 2000年6月10日 | アピア(サモア) | 9-68 | 負け |
| 2001年7月4日 | 味の素スタジアム(東京) | 8-47 | 負け |
| 2006年6月17日 | ニュープリマス(NZ) | 9-53 | 負け |
| 2007年6月16日 | 仙台 | 3-13 | 負け |
| 2008年7月5日 | アピア | 31-37 | 負け |
| 2009年6月18日 | シンガトカ(フィジー) | 15-34 | 負け |
| 2010年6月19日 | アピア | 31-23 | 勝ち |
| 2010年10月30日 | 秩父宮 | 10-13 | 負け |
| 2011年7月2日 | 秩父宮 | 15-34 | 負け |
| 2012年6月17日 | 秩父宮 | 26-27 | 負け |
| 2014年5月30日 | 秩父宮 | 33-14 | 勝ち |
| 2015年10月3日 | ミルトン・キーンズ(イングランド) | 26-5 | 勝ち(W杯) |
| 2019年10月5日 | 豊田スタジアム(愛知) | 38-19 | 勝ち(W杯) |
| 2023年7月22日 | 札幌ドーム | 22-24 | 負け |
| 2023年9月28日 | トゥールーズ(フランス) | 28-22 | 勝ち(W杯) |
| 2024年9月15日 | 秩父宮 | 49-27 | 勝ち |
19戦7勝12敗。総得点は日本410、サモア574です。2012年までの13試合では2勝11敗。1点差、3点差、6点差の負けも並んでいて、「あと一歩が届かない相手」だったことがわかります。
流れが変わったのは2014年。秩父宮で33-14と快勝し、翌2015年のW杯で26-5。2019年、2023年とW杯で連勝し、2024年のPNC準決勝も49-27。唯一の負けは2023年7月、札幌での22-24です。
2023年7月の札幌と、2024年9月の秩父宮
W杯以外の直近2試合も押さえておきます。2023年7月22日、札幌ドームでのパシフィック・ネーションズカップ。W杯直前の調整期間に行われた試合で、日本は22-24と2点差で敗れました。W杯本番の2か月前に、同じ相手に負けている。この事実があったからこそ、トゥールーズでの勝利は「借りを返した」試合になりました。
2024年9月15日の秩父宮は、エディー・ジョーンズHCが再就任した最初のシーズンのPNC準決勝です。日本は49-27で快勝し、そのまま決勝へ進みました(決勝はフィジーに敗戦)。スピードでサモアのディフェンスを横に振り回し、ブレイクダウンで捕まる前にボールを動かす。今の日本代表のやり方が、サモア相手にはっきり通用した試合でした。
その後の2年間、日本とサモアのテストマッチはありません。2026年のPNCで日本はアメリカ、フィジーを破って優勝しましたが、サモアとは顔を合わせていない。つまりW杯2027の初戦は、約3年ぶりの対戦になります。お互いの「今」を映像でしか知らない状態で、いきなりW杯のピッチに立つわけです。
2019年 豊田:最後のワンプレーで取った勝ち点1
日本大会のプール3戦目、2019年10月5日の豊田スタジアム。日本はすでにロシア、アイルランドに勝っていました。前半を16-9で折り返し、後半にかけて主導権を握ります。
トライはラファエレ ティモシー、姫野和樹、福岡堅樹、そして松島幸太朗。田村優が3ゴール4PGを加えました。3本目のトライまでは取れていて、4トライ目を取ればボーナスポイント。時計が80分を過ぎても日本は攻め続け、最後に松島がインゴールに飛び込んで38-19。勝ち点5を持ち帰り、プール首位に立ちました。
当時のジェイミー・ジョセフHCは試合後、「最後の最後まで信じて戦った」という趣旨を語り、後半に入ったリザーブの働きをたたえています(Sporting Life)。
2023年 トゥールーズ:14人のサモアに追い上げられた夜
フランス大会のプール3戦目は、2023年9月28日(現地)にトゥールーズで行われました。日本はイングランドに敗れていて、ベスト8に望みをつなぐには負けられない試合。しかも2か月前の札幌で、サモアに22-24で敗れていた相手です。
日本は13分にラブスカフニ ピーターのトライで先制し、32分にリーチ マイケル、後半49分に姫野和樹が加点。松田力也が2ゴール3PG。前半は17-8で折り返しました。
試合を大きく動かしたのは、サモアWTBベン・ラムのハイタックルです。ラブスカフニの頭部に入ったタックルでイエローカードが出され、のちにレッドに引き上げられた。サモアはそこから14人。それでも終盤に2トライを返し、最終スコアは28-22。6点差だったので、サモアには7点差以内の負けに与えられるボーナス点が1つ入りました。
日本の側にも、HO堀江翔太が頭同士の接触でシンビン(10分間の一時退場)になる場面がありました。ブレイクダウン(倒れた選手の周りでのボール争奪)とタックルの高さ。サモア戦はいつも、ここで試合が決まります。カードの基準については20分レッドカードの記事もあわせてどうぞ。
Q12023年W杯の日本対サモア、日本は3トライで勝ちました。もし日本があと1トライ取っていたら、何が変わった?答えを見る
日本に4トライ以上のボーナス点が1つ加わり、勝ち点は4ではなく5になっていました。さらに点差が8点以上に開けば、サモアの7点差以内のボーナス点も消えます。1本のトライが、自分に+1、相手に−1。W杯のプール戦で「最後まで攻める」理由はここにあります。
サモアの現在地:最後の1枠からの出場
今のサモアは、かつての「怖いサモア」とは少し事情が違います。2025年のパシフィック・ネーションズカップではプール戦でフィジーとトンガに敗れて3位。予選のプレーオフではアメリカに13-29で敗れ、南米・太平洋プレーオフではチリと32-32で引き分けたあと、アウェーで12-31と敗戦。合計スコアで届かず、最後のチャンスである最終予選(ドバイ)に回りました。
2025年11月のドバイでは、ブラジルとナミビアに勝ち、最終戦のベルギー戦は13-13の引き分け。この引き分けで最終予選を制し、24チーム目として本大会の切符をつかみました。指揮を執るのは、2025年4月に就任したトゥシ・ピシHC。代表で42キャップを持つ元主将です。
ただし、サモアをランキングだけで測るのは危険です。初出場の1991年大会ではウェールズを16-13で破り、1991年と1995年の2大会続けてベスト8に進んだ国。W杯という舞台で格上を食う文化を持っています。主将のテオ・マクファーランドは、ラグビーとバスケットボールの両方で代表経験を持つ異色のFW。こういう選手がいるチームは、1つのビッグプレーで試合の空気を変えてきます。
2026年9月21日発表の世界ランキングでは、サモアは20位で、プールEの4チームの中では最下位です。日本は9位。
楽勝派の根拠は、ランキングの差と2024年の49-27。予選でアメリカやチリに勝てなかったチームが、1年で日本を上回るとは考えにくい。接戦派の根拠は、サモアの選手層がW杯のたびに入れ替わること。欧州のクラブでプレーする選手が本大会に合わせて集まれば、戦力は予選とはまったく別物になる。2023年に札幌で負けた2か月後、本番で6点差まで詰め寄られたことも忘れてはいけません。
W杯2027初戦、日本はどう勝つか
ここからは元ラガーマンとしての見立てです。ポイントは3つ。
- 最初の20分で「当たり負けしない」サモアはボールキャリア(ボールを持って前に出る選手)の一撃が重い。最初の数回のコンタクトで下がると、そのまま押し込まれる。ダブルタックルで刺さる形を早く作りたい。
- 規律で勝つ2023年はサモアのカードが試合を動かした。逆に言えば、日本が同じことをすれば一気に傾く。タックルは低く。ブレイクダウンでの反則を減らすことが、そのまま勝ち点になる。
- 昼の試合、ボールは乾いているキックオフは現地12:15。10月のニューカッスルは平均最高気温が20℃台前半で、雨でなければボールを動かしやすい。ボールを大きく動かし、サモアのFWを横に走らせたい。
日本は2026年7月に、この会場でアイルランドと戦っています。芝の感触、ロッカールームからピッチまでの距離、スタンドの近さ。1年前にそれを知っているのは小さなアドバンテージです。現地観戦を考えている人は現地観戦ガイドも参考にしてください。
勝ち点計算の面では、4トライ以上で勝つこと、そして8点差以上をつけてサモアにボーナス点を渡さないことが理想です。プールEの2位争いは日本、サモア、アメリカの三つどもえになる可能性があるので、初戦の1点がそのまま最後に効いてきます。詳しくは日程と勝ち点シナリオの記事で試算しています。
参考:Wikipedia(日本代表テストマッチ一覧)/Sky Sports(2023年W杯 日本対サモア)/Sporting Life(2019年W杯 日本対サモア)/Rugby World Cup(最終予選 サモアのチームガイド)/World Rugby(サモアの本大会出場決定)/ラグビーリパブリック(世界ランキング)
負け越しの歴史と、W杯3連勝の現在。サモアは、日本代表がどれだけ強くなったかを測る物差しのような相手です。初戦で勝ち点5を取って、フランス戦に向かう。1年後の10月3日、日曜の朝10時15分に、その答えが出ます。
